「美女と野獣」というとディズニーのイメージが強いかもしれませんが、古くは2世紀頃のローマまでその起源をさかのぼれるといわれています。
それから1800年以上にわたり、「美女と野獣」は「現実における男女の関係と役割」を反映してきました。
予告動画)美女と野獣
これ以降の内容は、ネタバレも含みますのでご注意ください。
女性のための物語
『美女と野獣』という物語が最初に本になったのは、1740年にフランスでヴィルヌーヴ夫人(ガブリエル=シュザンヌ・ド・ヴィルヌーヴ)が書いた版なのですが、日本で「美女と野獣」の原作として主に読まれているのは1756年出版のボーモン夫人(ジャンヌ=マリー・ルプランス・ド・ボーモン)が書いた版です。
ボーモン夫人の「美女と野獣」は、「家のために親子ほど歳の違う金持ちに嫁いだ女性」の物語です。昔はそういうことが実際によくあったのです。
でも若い娘の立場としては、いくら金があろうとブサイクなおっさんの嫁になるよりは、たとえ貧乏でも身近にいる若者と結婚したいと願うのが人情というものでしょう。
そんな娘を説得するために大人たちは……『美女と野獣』の話をしたわけです。
たしかに先方は見た目がケダモノかもしれない。でも、その中には、優しい紳士がいるんです。お前を本当に幸せにしてくれるのは彼なのです。
とはいえ、お見合い結婚ではなく恋愛結婚が主流の現代において、「家のために親子ほど歳の違う金持ちに嫁ぐ」ことは(先進国では)ほとんどなくなりました。
現代版「美女と野獣」はどのようなメッセージを発信しているのでしょうか?
男性のための物語
精神病院に入れられそうになった父親に会うために、野獣は幽閉していたベルを解放します。なぜ解放したのか?それは『愛しているから』です。
愛は相手を閉じ込めるものではなく「相手を解放することだ」というメッセージを受け取るわけですが、最大のクライマックスは「ダンスシーン」でしょう。
野獣はコミュニケーションをベルとのダンスで学ぶのです。2人で踊るにはコミュニケーションが必要です。つまり相手を受け入れ自分を開くことを、野獣はベルから学ぶわけです。
アルフレッド・アドラーの思想を紹介した「幸せになる勇気」にもこんな記述があります。
アドラーは、ダンスのことを「ふたりの人間が共同の仕事に参加する遊び」だとして、子どもたちにも広く推奨していました。愛と結婚は、まさしくふたりで踊るダンスのようなものでしょう。
どこへ行くのかなどと考えることなく、互いの手を取り合い、今日という日の幸せを、いまという瞬間だけを直視して、くるくると踊り続ける。あなたたちが長いダンスを踊りきった軌跡のことを、人は「運命」と呼ぶでしょう。
幸せになる勇気
歴史の変化に合わせて、『美女と野獣』は嫁に行く女性向けの物語から、殻を破れない男に向けた物語へと変化してきたのです。
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