永遠なる昨日的なもの

冷静になってみると「なぜ?こんなことを今もやっているのだろう?」と不思議に思うことがあります。例えば大物政治家への登竜門といわれている「議事進行係」が「ぎちょー!」と叫ぶ雄たけびなんかがそうです。

伝統主義

ドイツの政治学者・社会学者・経済学者のマックス・ヴェーバーは、ゲーテの「永遠なる女性的なもの」をもじって、伝統主義を「永遠なる昨日的なもの」(das ewig Gestrige)と表現しました。永遠なる昨日的なものとはなんでしょうか?

日本のマックス・ヴェーバー研究の第一人者である故・大塚久雄東京大学教授は、こんな風に説明しています。

先祖や父母たちがやってきた、そして、自分たちも今までずっとやってきた、そういうことがらを、過去にやった、あるいは過去に行われたという、ただそのことだけで、将来における自分たちの行動の基準にしようとする倫理、あるいはエートスです。

【出典:社会科学における人間

近代人の行動

伝統主義をうち破ったことで、近代という時代がはじまりました。とするなら伝統主義をうち破れない国会議員は近代人ではないし、もし昨日の自分からオサラバできない人がいるのだとすればその人は近代人というよりも中世人です。

しかしそもそもなぜ、冷静になれば「なくてもいい」、「やらなくてもいい」はずのことを、実際にはやめられないのでしょうか?その答えは「わたしたちは皆、過去に生きているから」です。

前回の講義の内容を思い出して下さい。RASの働きのパターンをつくるのは情動記憶でした。そう。記憶なのです。記憶がRASの働きのパターンをつくる以上、わたしたちは過去に生きているのです。

自動販売機

私の住む家の近所には自動販売機が置かれています。ある日、自動販売機の台数が変わりました。家族は誰もそのことに気づいていませんでした。

また別のある日、自動販売機の商品ラインナップからウィルキンソンの炭酸が姿を消したのですが、家族の誰もそのことに気づいていませんでした。

あなたにも、近所の繁華街の一画にある建物が取り壊されているのを目の当たりにして、「この建物以前は、何屋さんが入居してたっけ?」と疑問に感じた経験はありませんか?

そう。私たちは皆、過去に生きているのです。そして人によって過去の記憶は異なるのです。である以上、私たちが認識している『現在』というものも人それぞれなのです。

伝統主義をうち破った秘訣

中世の人たちは、どのようにして伝統主義をうち破り、近代を手に入れたのでしょうか?それはマインドが変わったからです。

教科書的な説明では「産業革命が起きた」⇒「資本主義が生まれた」というような解説が一般的です。しかしマックス・ヴェーバーによれば「資本主義の精神が広まった」⇒「生産性が向上した」⇒「産業革命が必要になった」のだそうです。

今回は『資本主義の精神』についての説明は省略します。重要なことは、精神つまりマインドが変わったからこそ人々の行動が変わり、社会も変わっていったということです。近代人を手本にするのであれば、あなたが変わるためにやるべきことは、行動を変えることよりも先にマインドを変えることなのです。

もしマインドを変えなければ行動は変わらず、過去が決めた自分の意見や考え方は毎日コピーされ強化され続けることになります。そして同じパターンを繰り返せば繰り返すほどRASの働きは強くなり、ますます昨日と同じものしか見えなくなってしまいます。

あなたはあなた自身を「永遠なる昨日的なもの」から救い出す心の準備ができているでしょうか?

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