前回の講義では、「煩悩をコントロールする生き方が、縁起を実践することにつながる」ということを説明しました。
今回の講義では、そのあたりももう少し掘り下げて解説したいと思います。
催眠術の秘密
突然ですが、あなたは催眠術にかかったことはありますか?
わたしは催眠術に興味があったので、催眠術の大家が集まる会合に参加させてもらったことがあります。
視聴率20%を超えるTV番組に参加していた有名な先生や、有名アイドルや有名タレントなどに催眠術をかけた先生などが参加していました。
その会合にはわたしのように催眠術未経験の人間が何人か参加していたのですが、わたしは催眠術をかけてほしくてウズウズしていました。
そんな折、たまたまわたしは催眠術の大先生の横に座ることができたので、「催眠術をかけてほしいのです。」とストレートにお願いしました。
するとその先生「いいよ。」といって、わたしに催眠術をかけはじめました。するとわずか数分後には、わたしの人差し指と親指はガチガチにくっついて離れなくなっていたのです。
その先生から「感想はどう?」と質問されたのですが、わたしは正直に「怖い」と思いました。指先のコントロールをわずか数分で他人に奪われるのは、当時のわたしにとっては「未知の世界」であり、その世界に足を踏み入れた瞬間に、これまでの常識がすべてひっくり返されたような気持ちになり、ものすごく不安になったのです。
もちろん催眠術にかからない人もいました。催眠術にかからない人からすれば、わたしは「ヤラセ」をやっているか、先生が用意した「サクラ」にしか見えなかったと思いますし、実際に催眠術にかからない参加者からそのような疑問を直接ぶつけられたりもしました。
催眠術にかかる人と、催眠術にかからない人では、どのような「差」があるのでしょうか?
実はわたしはその答えを事前に知っていました。催眠術について少し勉強してから会合に参加したのです。実は……催眠術師が催眠にかけるのは対象者ではなく「自分」なのです。
では対象者に催眠をかけるのは誰でしょうか?そう。答えは「自分自身」なのです。これが催眠術のカラクリなのですが、ほとんどの人が知らないことです。
つまりわたしは「催眠術にかかりたい」と心の底から願っていたからこそ催眠術にかかったのです。催眠術師はあくまでも、わたしを「あっちの世界」に引きずり込んでくれる経験豊富なガイドでしかないのです。
逆に催眠術にかからない人は「本当に催眠術なんてあるのかな?」とか、「催眠術にかからないと(催眠術師に)悪いかな?」などという気持ちが心のどこかにあるのです。つまりそもそも「あっちの世界」にいく気がないのです。だから催眠術にかからないのです。
さて……催眠術の話と「縁起」にどのような関係があるの?と疑問に思った方もいると思いますが、大いに関係があるのです。
催眠術と縁起
前回の講義において縁起を実践する生き方は、「煩悩を否定することではない」ということをお伝えしました。わたしの伝えたかったことの真意は、「煩悩はコントロールすることが重要」ということでした。
ここで「煩悩のコントロールする」ということの意味を「暴走する煩悩をおさえる」などと誤解してはいけません!
「煩悩をコントロールする」とは、もちろん「暴走する煩悩をおさえる」という意味も含まれているのですが、「小さな煩悩を大きくする」という意味も含まれているのです。
「暴走する煩悩をおさえる」とは、縁起の文脈でいうならば「あると思っているものはない」ということです。例えば「お金で買える」と思っている煩悩は「幻」だということです。(唯識の考え方)
暴走する煩悩をおさえることができれば、例えば「節約上手」になれます。年収3,000万円をもらっているけど、そのお金のほとんどを消費ではなく貯金や投資に回すということができます。
その一方で「小さな煩悩を大きくする」とは、縁起の文脈でいうならば「あると思っているものはもっとあるのだ」ということです。例えば「自分はできる」という小さな自信を「自分ができないわけがない」という大きな自信に変えることもできるのです。
なお「煩悩を大きくする」ことは、一見すると利己的な考え方だと勘違いされがちなのですが、そうではありません。むしろ煩悩が小さいことが問題なのであって、煩悩はもっと大きくすべきなのです。
例えばあなたが「美味しいものが食べたい」という欲望を抱えるとき、その欲望を自分だけが満たすのであれば『利己的』です。その一方で「美味しいものを食べたい」という欲望を、自分以外の人にも満たしてもらうのであれば『利他的』になれるのです。
あなたの大きな煩悩が、たくさんの人々を幸せにする日がやってくることを願っています。
【完】