戦前の行動右翼と戦後の新左翼にも「アノミーの特徴」が色濃く刻印されていることを確認してきました。
そして今回は、戦前と戦後の中間である戦時中にも「アノミーの特徴」を発見できることをお伝えします。
戦争を決断した人
あなたは日本が第二次世界大戦に突き進んだ理由についてどのように理解しているでしょうか?
軍国主義者が善良な日本国民を第二次世界大戦に巻き込んだのだ、というのは無教養極まりない考え方です。政治思想学者の故・丸山真男(東京大学名誉教授)は、戦前における軍国主義の思想と行動を分析して、(現代人のわたしたちからすると)驚くべき発見をしました。
なんと、あれほどの大戦争を引き起こしながら、明確な決断主体は一人も見当たらないというのです。誰もが対英米戦争には「反対」しつつも、反対の意志を明確な形で表明することはなく、気がついてみたら日本は未曽有の大戦争に突入していたというのです。
なんという無責任(無規範)、なんという無目的でしょうか?
大東亜戦争(太平洋戦争のこと)を指導した軍事官僚の思考の特徴は、連合赤軍その他の新左翼においても特徴的だった「盲目的予定調和説」にあります。
丸山真男の分析を踏まえると、軍事官僚の「盲目的予定調和説」的な思考は、次のように整理できるでしょう。
- 自分たちこそ選ばれた、自覚せるエリートであり、日本の運命はただ自分たちの努力にのみかかっている。
- この努力は特に技術の発揮という形でなされ、このために全身全霊を打ち込むことが要求される。
- したがって、この特定の行動の遂行のみが肝要であり、その他の事情は自動的にうまくいき、結果的に日本は安泰である。
といった発想に沿って行動するのが軍事官僚であり、日本人だったのです。
山本五十六
アメリカに留学経験もあり、ハーバード大学で学んだ山本五十六は、日米間の国力の差があまりにも大きいことを熟知していました。だから長期戦では勝ち目がなく、日本のチャンスはただ一つ速戦即決にあることを確信していました。
速戦即決の目的は早期講和です。早期講和のために計画されたのが真珠湾攻撃でした。
しかし残念ながら、このような発想そのものが「無目的」だったのです。なぜならば真珠湾攻撃の成功は、講和のチャンスをゼロにしてしまうからです。
アメリカをよく知っていたはずの山本五十六が、真珠湾攻撃がアメリカ国民に与える影響を見落としていたことは、驚くべきことです。
結果的に、真珠湾攻撃が「リメンバー・パールハーバー」の元凶となり、アメリカ国民を戦争に駆り立ててしまったのです。
しかし軍事官僚はどこ吹く風。軍事官僚は連合赤軍兵士が女連れのわずか二十余名で東京を占領し、革命を遂行できると信じた如く、太平洋戦争の必勝を信じていたのです。
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