日本人が政治家に「クリーンさ」を求める背景には、いわゆる上級国民に対して、「裏で汚いことをやっているのではないか?」という疑いがあるからではないでしょうか?
残念ながら日本国民の願いとは裏腹に、上級国民による汚職は後を絶ちません。自民党議員は裏金をつくり、高市早苗との一騎打ちに勝利した石破茂首相は、裏金議員を衆院選で原則公認する方針を固めました。
そこで今回は、なぜ日本は汚職が多いのか?ということについて考えておきたいと思います。
ノブレス・オブリッジの欠如
日本に汚職が多い理由は、ズバリ・・・ノブレス・オブリッジの欠如でしょう。ノブレス・オブリッジとは、特権のあるものは、それだけ大きな責任を社会に対して負うという自覚のことです。
ノブレス・オブリッジは、あくまでも自覚であるので、他人によって強制されるものではなく、自発的な誇り高い意識によって実行されることが特徴です。
ノブレス・オブリッジは、どのようにして生まれるのでしょうか?
江戸時代における武士教育がわかりやすいでしょう。武士道教育のエッセンスは、「百姓町人とは、根本的にちがった人間であるという意識をたたき込むこと」にあります。
この差別意識こそが、ノブレス・オブリッジを生み出す源泉になります。ですから武士はどれだけ生活が苦しくとも、倫理的に百姓町人よりも優れているかのようにふるまったのです。
ここまで話せば、日本にはノブレス・オブリッジが育つ土壌そのものが、日本にはないことがわかるでしょう。
東大法学部の選民思想
わたしが学生の頃、官庁に就職した先輩から「大蔵省では東大法学部以外は人にあらず」という話を聞いて、驚いたことがあります。
大学はすべて平等であり、そこにはなんら差別もあってはならない・・・というのが、日本社会の建前であるのに、東大卒のなかにも厳然たるヒエラルキーが存在するというのです。
そう。多くの日本人が知っているように、「東大卒の特権は存在する」のです。しかし・・・東大卒の特権は「非公認」なのです。
東大卒の特権は非公認であるため、東大卒であることを誇示し、その特権を享受し、他大学卒のひとたちを見下すことに、ある種のためらいを感じるようになってしまうのです。だ・か・ら、日本にはノブレス・オブリッジの意識が生まれないのです。
国を導くのは自分だ、というノブレス・オブリッジの意識は、自分のもっている特権を正当なものであると認め、これを隠すことなく周囲に誇示し、世間もこれを認める、ということからはじめて発生するのに、日本社会に存在するあらゆる特権は「非公認」なのです。
汚職意識しか生まれない
ノブレス・オブリッジを欠いたいわゆる「非公認特権階級」からは、なにが生まれるのか・・・といえば、汚職意識です。なぜならば特権にブレーキをかける高い倫理観が、そこには存在しないからです。
そして特権階級の汚職意識は、社会全体に広がっていきます。ひらたくえいば、上が腐れば、下も腐るのです。特権階級が大きな汚職をすれば、一般庶民は小さな汚職をするようになるのです。
国会議員の億単位の犯罪から、【新宿109】などのYouTubeチャンネルで紹介されている詐欺にいたるまで、みごとな汚職のネットワークではありませんか。
日本は(建前的には)平等な国であるからこそ、ノブレス・オブリッジは育たず、特権階級の暴走に歯止めをかけることができないのです。