もしあなたが会社に勤めていて、会議の前に同僚から「紅茶買ってきましょうか?」といわれたら……あなたはどう反応するでしょうか?
普通はコーヒーだろ?
もしあなたが「普通はコーヒーだろ?」と思ったのであれば、あなたは日常生活のなかで無意識にコーヒーを選択していることになります。このような行動の傾向のことを「アティチュード」といいます。
そしてもしあなたが毎朝コーヒーを飲んでいるのであれば、あなたにはコーヒーを飲む習慣(ハビット)があることになります。ではアティチュードやハビットはどこからやってきたのでしょうか?
それはもちろん「自我」です。自我は日常生活の何気ない無意識の行動にも及んでいるのです。とはいえ生まれる前から「わたしはコーヒーを飲む」というような情報がDNAに書きこまれているわけがありません。
ですから私たちのもっているアティチュードやハビットというものは、生まれたときから現在までのいつかどこかのタイミングで書きこまれたものなのです。ではそのタイミングは一体いつだったのでしょうか?
レストランで騒がない「いい子」
私は子どもの頃、両親の仕事の都合でイタリアに住んでいました。レストランで食事に連れてってもらうこともあったのですが、イタリアでは「レストランは大人がくる場所」というのが常識でした。
当時のイタリアでは(おそらく現在でも)『ファミリーレストラン』という概念はなかったのですが、日本人の子どもである私がレストランにいっても拒否されなかったのは、「騒がなかったから」という理由もあったと思います。
私の両親(特に父親)は現在では絶滅危惧種(?)の「自分が正しいと思うことを教えるためには、鉄拳制裁もいとわない」というタイプの九州男児で、イタリアに行く前の日本で暮らしている時点で「レストランで騒いだら、容赦なくぶん殴られる」ということがわたしの頭にはプログラミングされていました。
今になって当時を振り返れば「レストランで騒ぐのが子どもの仕事」という気もします。しかし子どものころからレストランに限らず、「公共の場で騒いだら怒られる」ということがプログラミングされていた当時のわたしは、見ず知らずの子どもが騒いでいる状況を目撃しただけで、ヒヤヒヤしていました。
なぜ?私の過去の思い出について紹介したのかというと……自我のパターンがどのように作られるのか?という話をするのに役立つと思ったからです。
情動記憶⇒自我のパターン
私がレストランで少しうるさくしたとき、私の父は「うるさい」といって、私が頭をグーで殴りました。私は「痛い」思いをして、わんわん「泣き」ました。
逆にレストランで静かに食事をした場合、私の母は「いい子ね」といって、私の好きな料理を注文してくれたので、私は「美味しい」思いをして「射幸心」を満たしました。
そのような過去の記憶が私の自我のパターン、この場合には「レストランでは騒がないほうがメリットがある」というパターンをつくりあげていったのです。では過去の記憶とは?
自我をつくる過去の記憶とは、『ワーズ』(言葉:うるさい、いい子ね)、『イメージ』(五感:痛い、美味しい)、『エモーション』(感情:悲しい、射幸心)がセットになった記憶のことをいい、コーチングの世界では「情動記憶」といったりもします。
あなたの情動記憶は?
私が高校大学と勉強に熱心だったのも、振り返って考えてみれば父の影響が強いです。専門学校卒の父は、大手航空会社の整備士から、大手自動車メーカーのエンジニアに転職した苦労人だったのですが、物心つくかつかないかの私にこういいました。「これからの時代、学歴がないと将来真っ暗だ」と。
私は父のセリフを聞いた当初は冗談だと思いました。しかし父は真顔で「嘘じゃないよ。ちゃんとした学歴がないといい会社には入れないし、出世もできないし、給料も上がらないし、落ちこぼれて大変な思いをするのは間違いない!」と主張したのです。
物心つくかどうかの年頃だった私にとって、父はすなわち「世界」でした。それまでの私は公文式ですらマジメにやらないような子どもだったのに、マジメに取り組むようになりました。なぜならば、とにもかくにも将来真っ暗になるのが怖くて怖くてしょうがなかったからです。
成功の邪魔になる情動記憶
私の話を聞いたあなたは、「勉強するようになったからよかったじゃない?」と思うかもしれませんが、過去の情動記憶がつくりあげるアティチュードやハビットが、これからの将来にプラスに働く保証は一切ありません。
むしろ過去の情動記憶がつくりあげるアティチュードやハビットが、良い結果を生み出すどころか妨げる可能性だってあるのです。
例えば異性に告白して拒否された過去が原因で、誰かを好きになることを避けるようになるとか……大勢の前でスピーチして恥をかいた過去が原因で、親友から依頼された結婚式のスピーチを断って友情にヒビが入るとか……博打で大勝したときのことが忘れられなくてやめられないとか……
もしあなたにやり遂げたいことがあるなら、逃げずに立ち向かわなければいけない状況だってあるのです。そのためにも私たちは、情動記憶に対処する術を身につけなければならないのです。
■ 次はコチラ
■ 『進化』の記事一覧