よくこんな人がいます。
「貧乏はイヤだ。お金持ちになりたい!」といいながら、好きでもなく給料がよいわけでもない仕事を我慢してやっている。
そしてお金持ちになりたいならお金の使い道をよーく考えなければいけないのに、給料日にお金が手に入ればお酒を飲んで愚痴をいったり、自分へのご褒美に散財してしまう。
「わたしは一体、何をやっているんだろう?」と自問自答し、「こんな自分はそろそろやめたい!」と思う瞬間もあり、「どうしたら変わることができるのだろうか?」と考えだすといろいろなアイディアが思い浮かぶ。
しかしアイデアに着手することはない。なぜならば「やりたいことが見つかれば」「元手があれば」「学歴があれば」「チャンスがあれば」「資格があれば」「助けてくれる人がいれば」「若ければ」「経験があれば」など、今の自分がもっていないものや欠けている要素を次から次に思いつくから。
そして思い切って挑戦しても「どうせわたしなんか、何をやってもダメなんだから」とすぐに結論づけて諦める。
お金に限らず、健康、恋愛・結婚生活・子育て・キャリア・ビジネス等の面で、心の底では「現状を変えたい」と願っていることがあるのに、なかなか『結果』を出せない……
そしてなかなか『結果』を出せないうちに、『結果』を出せない自分が当たり前になり、そのうち「現状を変えたい」という希望すら抱かなくなる……
最終的には夢や希望について考えることすら苦痛になり、夢や希望を抱いている他人を目撃するたびにうっとうしく感じ、自分の子どもが夢や希望を語れば「現実を見ろ」といいたくなってしまう……
どうすれば本当に「やりたいこと」が見つかるのでしょうか?どうすれば本当に『結果』が出せるのでしょうか?
結果が出ない原因と対策
「やりたいことが見つからない」とか、「なかなか結果が出せない」という悩みの根本原因は、コンフォートゾーンで説明できます。コンフォートゾーンとはなんでしょうか?
人間には「現実に自分にできる」という「自分にとって居心地のいい領域」の中で活動しようとする無意識の働きがあります。その無意識の働きのことをホメオスタシス(恒常性維持機能)といい、「自分にとって居心地のいい領域」のことをコンフォートゾーンといいます。

コンフォートゾーンとはいわば「自分という人間は、だいたいこんなもの」という領域のことであり、コンフォートゾーンの外にあることはそもそも認識できません。またコンフォートゾーンから外れると、それがよい状態であろうと悪い状態であろうと私たちは居心地が悪くなり、コンフォートゾーンに戻りたくなってしまうのです。

「やりたいことが見つからない」「なかなか結果が出せない」などの悩みと、コンフォートゾーンにはどのような関係があるのでしょうか?
まず「やりたい(はずの)こと」がコンフォートゾーンの外にある場合には、コンフォートゾーンの外の世界が盲点になってしまうため、そもそも「やりたい(はずの)こと」が認識できないのです。だから「やりたいことが見つからない」と悩むハメになるのです。
また「やりたいこと」が認識できたとしても、やりたいことをやるためにコンフォートゾーンの外に出なければいけない場合、「自分には無理」と挑戦する前から諦めてしまったり、挑戦しても結果が出なければ「やっぱり自分には無理だったんだ」と諦めやすくなります。
さらに興味深いことに、結果が出たとしても「自分には分不相応だ」と感じてそれ以上の結果を出すことを恐れようになるのです。だから「なかなか結果が出せない」と悩むハメになるのです。

つまり「やりたいことが見つからない」「なかなか結果が出せない」などの悩みの原因は、現状のコンフォートゾーンが『やりたいことなんてよくわからんし、別に結果を出さなくてもいい』という状態にあるからなのです。
「やりたいことが見つからない」「なかなか結果が出せない」などの悩みを解決するためには、どうすればいいのでしょうか?
答えは簡単です。「コンフォートゾーンをズラす」のです。『やりたいことなんてよくわからんし、別に結果を出さなくてもいい』というコンフォートゾーンを、『やりたいことがありすぎて、結果を出すのが当たり前』というコンフォートゾーンにズラすのです。

ではどうすれば「コンフォートゾーンをズラす」ことができるのでしょうか?実は……コンフォートゾーンをズラすためにやるべきことは、『勝ち組も負け組も、なぜ幸せになれないのか?』のなかで、すでにお伝えしています。
コンフォートゾーンをズラすためにやるべきことは、とてもシンプルです。
- 導きの星の設定
- 目標設定
- 行動
参考記事『勝ち組も負け組も、なぜ幸せになれないのか?』においては、「心の底から実現したいこと」のことを、アドラー心理学の『導きの星』という概念で説明しました。
一方でコーチング用語では、「心の底から実現したいこと」を設定することを『ゴール設定』と表現します。さきほど紹介した「コンフォートゾーンをズラす手順」をコーチング用語に入れ替えると……
- ゴール設定
- 目標設定
- 行動
『勝ち組も負け組も、なぜ幸せになれないのか?』で紹介した安藤百福の場合……
- ゴール設定
→飢えに苦しまない社会の実現 - 目標設定
→お湯があれば家庭ですぐ食べられるラーメン - 行動
→チキンラーメンの開発
ゴール設定・目標設定・行動はいずれもシンプルです。しかし簡単ではありません。また残念ながら、それぞれについて言葉で説明することも簡単ではありません。『RICH STRATEGY』では、あの手この手で説明する予定なので、楽しみにしていてください。
とはいえ「今度くわしく説明します」という状態で終わりたくないので、もう少し説明を続けたいと思います。
百聞は一見に如かず
「コンフォートゾーンをズラす」を、直観的に理解するのに役立ちそうなエピソードを紹介したいと思います。
ジョン万次郎
あなたは『ジョン万次郎』を知っているでしょうか?ジョン万次郎は、江戸末期にアメリカに渡り、帰国後に土佐藩校の教授や日米修好通商条約締結のさいに通訳を務めた人物です。ジョン万次郎の人生は、現代に生きるわたしたちに大きなヒントを与えてくれます。
ジョン万次郎は14歳のときに漁に出て遭難し、無人島に漂着したところを運よくアメリカの捕鯨船に救助されます。そしてアメリカに渡り、捕鯨船の船長の養子として暮らすようになります。
ジョン万次郎は日本で寺子屋教育を受けたことがなく、読み書きもそろばんもできませんでした。それにも関わらず、ジョン万次郎はアメリカに渡ってから熱心に勉強を始め、オックスフォードビレッジスクールに入学し、英語、数学、測量や航海術などを学びます。
卒業後、ジョン万次郎は捕鯨船の乗組員として生活しますが、西部で起こったゴールドラッシュに目をつけ、金の採掘で大儲けします。そして漂流してから10年後、ジョン万次郎はようやく日本への帰還を果たすのでした。
ジョン万次郎の体験談は『漂巽紀略』(ひょうそんきりゃく)という本にまとめられているのですが、その本を読めばジョン万次郎がアメリカでとった選択と行動のすべてが故郷への帰還のためのものだったと受け止めないわけにはいきません。
ジョン万次郎は「できなかったらどうしよう」だなんてことは最初から考えてもいなかったと思います。だからこそジョン万次郎は、とんとん拍子で人生がひらけるまるでファンタジーのような人生を現実に生きることができたのだと思います。
そう。マンガ「ワンピース」の主人公ルフィーは「海賊王に俺はなる」ことを確信し、ジョン万次郎は「日本に帰還する」ことを確信していたのです。
ジョン万次郎の存在は、人間の潜在能力を発揮し、離れ業のようなことをやってのけ、本当に望むことを実現してしまう好例といえるでしょう。人間は本当に望んでいることがあれば、無意識のうちに目標に向かい、やり遂げてしまうパワーをもっているのです。
信じられないパワーを発揮したエピソードをもう一つ紹介しておきます。
サン=テグジュペリ
『星の王子さま』という作品で有名なアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリには、「人間の土地」というエッセイ集があるのですが、そのエッセイ集のなかに『嘘みたいな本当の話』がのっているので紹介します。
サン=テグジュペリは哲学者でもあり作家でもありジャーナリストでもあったのですが、同時に郵便飛行機のパイロットでもありました。そんなある日、サン=テグジュペリの同僚が操縦する飛行機が、雪山に墜落したという衝撃的なニュースがサン=テグジュペリの耳に飛び込んできます。
サン=テグジュペリはとっさに「助けに行かなければ!!」と思ったそうなのですが、「雪山に墜落して生きているわけがない」というような諦めムードが漂うなかでは、同僚の生存については絶望的な気持ちになっていたそうです。
しかし本当に驚くべきことに……雪山に墜落した同僚は……自力で生還を果たすのでした。どうやって???
雪山に墜落した同僚も一旦は、「もうダメだ」と諦めたそうです。しかし気がかりなことがありました。もし自分の死体が雪山に埋もれて発見されなかった場合、保険金が下りずに家族が困ることが心配になったのでした。
だから同僚は目の前の岩にしがみつこうと決意しました。自分の死体が雪に埋もれないようにするためです。そして目の前の岩まで到着すると「次の岩までいこう」と決意し、次の岩に到着するとまた「次の岩まで頑張ってみよう」と決意し、あと一歩、あと一歩と頑張り続けたのだそうです。
その結果としてサン=テグジュペリの同僚は生還できた……というストーリーなのですが、わたしたちはジョン万次郎やサン=テグジュペリの同僚のエピソードからどのようなメッセージを受け取るべきでしょうか?
義務感からの解放
日本語の読み書きもできない状態で、異国の地アメリカで暮らすことになったジョン万次郎にとって、「祖国である日本に帰国する」ことは、心の底から実現したいことだったに違いありません。とはいえジョン万次郎にとって、日本への帰国は夢のまた夢だったでしょう。なにせジョン万次郎は、学もなければお金もなかったし、人間関係もゼロに等しい状態だったからです。
しかし学もなければお金もないからといって、ジョン万次郎は日本への帰国を諦めることができなかったし、サン=テグジュペリの同僚も、雪山に遭難したからといって「家族に保険金を残す」ことを諦めることができなかったのです。
「結果を出す」といったところで、その「結果」が意味することは人それぞれです。あなたが出したい「結果」とは、どのようなものなのでしょうか?
質問を変えましょう。どのような「結果」であれば、ジョン万次郎やサン=テグジュペリの同僚のように、あなたは頑張ることができるのでしょうか?
今、「頑張る」という言葉を使いました。しかし「心の底から実現したいこと」のためであれば、「頑張る」必要はないのではないでしょうか。なぜなら、心の底から実現したいことのためであれば、自然に行動できるはずだからです。
「心の底から実現したいこと」があれば、気持ちが楽になるはずです。なにせ「頑張る」義務感から解放されるのですから。
あなたの「心の底から実現したいこと」はなんでしょうか?そのために今やるべきことはなんでしょうか?それらについて考える上で、以下の空欄を埋めるのが役立つはずです。

☆には「心の底から実現したいこと」が入ります。あえて言葉にする必要はありません。イメージできればよいです。ジョン万次郎なら「祖国の地を踏んでいる自分の姿」をイメージしたかもしれません。
そして☆に一番近い楕円形の空欄には、「心の底から実現したいことの前に実現していること」が入ります。ようするに「心の底から実現したいこと」から逆算していって、最終的に「今やるべきこと」を突き止めるのです。
戦略を更新し続ける
「心の底から実現したいこと」の実現に近づけば近づくほど、「心の底から実現したいこと」は変わっていくかもしれません。そして「心の底から実現したいこと」が変われば、「今やるべきこと」も変わっていくかもしれません。
たとえば「お金持ちになりたい!」と思っていた頃は、お金を稼ぐことだけに頭が一杯だった人でも、お金に余裕がでてくるとお金を使うことで頭が一杯になることがあります。そしてお金を使うことに慣れると、お金に対する興味に加えて、経済や政治の世界にも興味を持ち始める……なんてことも珍しくありません。また年齢を重ねて体力が落ちるだけでも、気持ちというものは変わっていくものです。
もちろん自分の気持ちは変わらなくても、社会や世界の状況が変わってしまうことは珍しくありません。むしろ社会や世界の状況が変わっているのに、社会や世界の変化に対応できないがゆえに苦しんでしまうパターンのほうが多いかもしれません。だからこそわたしたちは、コンフォートゾーンをズラし続けなければならないのです。
『RICH STRATEGY』では、コンフォートゾーンをズラすために役立つ知識を継続的に発信しています。あなたなりの『結果』を出す上で、わたしが発信する情報がお役に立つことを願っています。
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