なんとなくから始めよう

これまでお伝えしてきたコーチング理論を実践している方であれば、コーチング理論そのものが「言語」にこだわっていることに気づくはずです。特にアファメーション文をつくる過程でそう感じた人もいるでしょう。

しかし実は……「言語」的なセルフコーチングは、セルフコーチングの世界のほんの入り口でしかないのです。「ゴールを設定しアファメーション文を作成するだけでも大変だったのに、まだ入り口にたどり着いただけだったなんて……」と驚く人もいるかもしれませんが、事実なのですからしょうがありません。

これからあなたにお伝えするのは「非言語」のセルフコーチングの実践についての情報です。「非言語のものを言語で伝えるなんて不可能じゃないか?」と思うかもしれません。確かに非言語のものを言語でお伝えするのはとても困難です。

しかしわたしは「非言語」の壁をなんとかして突破したいのです。それでは早速はじめましょう!

キリスト教的な価値観

はじめに言葉ありき、言葉は神と共にありき、言葉は神であった」という一節は、「新約聖書」ヨハネの福音書第一章第一節にある文章です。

「旧約聖書」と「新約聖書」の違いもわからない日本人には理解するのが難しいかもしれません。

しかし日本のコーチングは「アメリカ製」です。ですから本当にコーチングを理解しようと思ったらアメリカという国を建国したキリスト教プロテスタントについての知識は必須です。

今回は宗教をメインテーマにして解説するわけではないので、キリスト教については別の機会にじっくり解説することにしますが、ここで覚えておいてほしいことはキリスト教(特にプロテスタント)は聖書の記述を重要視するということです。

例えば「キリスト教徒である最低限の条件はなにか?」と問われたら、キリスト教徒でもない日本人でも「キリスト教を信じること」と答えるでしょう。とはいえ「キリスト教を信じる」といわれても、どのような条件を満たせば「キリスト教を信じる」状態といえるのでしょうか?答えは……

聖書の記述を信じる

「聖書の記述を信じること」がキリスト教徒である条件です。そもそも「旧約」や「新約」はどのような意味なのでしょうか?「約」は「契約」を意味しています。だから「旧約」は古い契約、「新約」は新しい契約のことです。

ではその肝心かなめの契約の内容はどこに書いてあるでしょうか?もちろん聖書です。だからアメリカ人は「契約書」にこだわるのです。契約に関する細かい内容をずらずらと書くのはそのためです。日本人のように「口約束」だけで、お互いが安心するなんてことはあり得ないのです。

以上のような宗教的な背景を理解すると、「言語」をベースにしたコーチングが理にかなっていることも理解できるはずです。なぜならばわたしたちの生きる近代社会は「言葉」で成り立っているし、言葉で説明されてはじめてわたしたちはいろいろなことを理解できるからです。

例えば信号機に赤いランプが点ったときに車を止めるのは、道路交通法でそう決められているからです。同様に、わたしたちのコンフォートゾーンも、アファメーション文という言葉で記述されることによってはじめて理解できるものになるのです。

しかしだからといって、言葉で人間の行動をすべて規定できるわけではありません

例えば「人を殺してはいけない」などと刑法に記述されているわけではありません。刑法には「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する」(刑法第199条)などと記述されているだけです。しかし「人を殺してはいけない」と刑法に記述されていないからといって、あなたは人を殺したいとは思わないはずです。

バグのないツール

言葉は人類史上もっともバグの少ないコミュニケーションツールといっていいでしょう。言葉で伝えることのできる感覚や感情は多いです。例えば「レモンを半分に切って、果汁を絞り出し、果汁の液をそのまま口に入れてください」といわれたらヨダレがでてきませんか?

そう。言葉によって想起されるイメージによって、わたしたちの五感は刺激され反応します。だからアファメーション文のなかに情動の言葉を入れるなどして、臨場感を高めることが出来るわけです。

しかし言葉によってイメージを想起されずとも、「なんとなく」というような曖昧な感情でいろいろな物事を判断しているのも確かではないでしょうか。例えば「あの人、なんとなく好き(嫌い)」という感覚は、言葉で説明するほうが難しいはずです。

逆に他人から「あなたのことが好き(嫌い)」といわれても、その理由を言葉にされても「どこか真実にせまっていない感じ」がするのではないでしょうか?

「なんとなく」を大事にする

あなたにはゴールの実現に近づいている日常生活のなかで、「なんとなく」の感情を大事にしてほしいのです。そして「なんとなく」の感情を言葉にする努力をしてほしいのです。そして言葉にした内容を他人に発信してほしいのです。

なんとなく感じる

あなたが何かを判断したり行動するたびに、そのときの自分自身の感情を「なんとなく」感じたり、味わったり、噛みしめるようにしてください。

なんとなくを言葉にする

あなたが感じたり、味わったり、噛みしめた「なんとなく」を、言葉にしてください。例えばなぜあなたは「なんとなく」の感情を味わったのでしょうか?

他人に発信する

「なんとなく」の感情を味わって言葉にしたら、それを他人に伝えて「わかってもらう」努力をしてみましょう。SNS・ブログ・メールマガジンで発信してもいいですが、直接反応を確かめることができないので、はじめのうちは家族や仲のよい友人に直接情報を伝えて、反応を確認するのがよいでしょう。

まずは自分を理解する

あなたには好きな芸能人がいるでしょうか?その芸能人のことを「なんとなく」感じてみて、その「なんとなく」を言葉にして、その言葉を他人に伝えてみましょう。

あなたが飲食店に行って料理を頼んだら、あなたには他の料理ではなくその料理を注文した理由があるはずです。その「なんとなく」の理由を感じて言葉にして、あなたがその言葉を伝えることで、その他人があなたが注文した料理に興味をもってくれるか確認しましょう。

「なんとなく感じて言葉にして他人に伝える」というワークは、単純でシンプルなのですが「自分を知る」という意味でとても効果的なので、是非、挑戦してみてください!

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