「AI生成で生産性向上!」という話を聞くたびに、いつも思い出す話があります。
予想外の結果
アメリカの有名な経済学者アーヴィン・ハンセン(ハーバード大学教授)が、インドのあるコミュニティ改革にたずさわったことがありました。
ハンセン教授の努力によって、生産性は2倍になりました。そこでハンセン教授は、このコミュニティ住民の生活水準は、おそらく二倍になるだろうと考えました。ところが結果は予想外のものでした。
翌年、ハンセン教授がもう一度そのインドのコミュニティを訪問してびっくりしたことは、このコミュニティの生活水準は、なんら変わっていなかったのです。
ハンセン教授がよく調べてみると、コミュニティの住民はなんと・・・『半分しか働かなくなった』のです。
資本主義者の発想
ハンセン教授がたずさわったインドのコミュニティのひとたちは、なんのために働いているのでしょうか?それはもちろん・・・生活水準の維持でしょう。
ではなぜハンセン教授は、「生産性が二倍になったら生活水準は二倍になる」と期待したのでしょうか?
それはもちろん・・・ハンセン教授が資本主義者であり、資本主義者は「利潤の最大化」を目指すのが当然だと考えるからです。
さて、この話の教訓は・・・
なんのために働くのか?
生産性を上げることは大事だけれど、生産性を上げることはあくまでも手段であって目的ではないことを忘れてはいけません。
そもそも「生産性を上げることは良いことだ」と考えること自体が、必ずしも正しいこととは限らないのです。わたし自身にもこんな経験があります。学生時代のアルバイト中、あきらかに仕事をノロノロとやっている人がいました。
わたしは素朴に「もっと早く仕事ができるのに、わざと遅くやっているのはなぜ?」と質問したら、「仕事を頑張っても給料が上がるわけでもないし、仕事を増やされても困るだろ?」と、こっそり教えてくれたのです。
生産性の向上が、利潤の向上につながる保証はどこにもないのです。