わたしが『ソビエト帝国の崩壊』を手にとったのは、著者である小室直樹さんが、社会学者である宮台真司さんの師匠であることを知ったことがキッカケです。
宮台真司さんは、師匠である小室直樹先生に『感染』したらしい。
それからいくつかの偶然が重なって、ぼくは社会学に導かれていく。そのぼくにとって、学問上、重要な師匠が2人いる。小室直樹と廣松渉だ。この2人の本を初めて読んで、ぼくは直観で「スゴイ」と思った。そして、そのまま2人の先生に「感染」してしまった。
【引用:14歳からの社会学】
宮台真司曰く・・・知識が人格を作るためには、「競争動機」(競争に勝って嬉しい瞬間)も「理解動機」(わからなかったことが理解できて嬉しい瞬間)も大したことなくて、「感染動機」が大切なこと・・・らしいのです。
わたしが感染した「宮台真司」が感染した「小室直樹」って・・・どんな人なんだろう???・・・という好奇心が抑えられず、購入したのが「痛快!憲法学」という1冊なのですが、衝撃を受けました。
わたしは本を選ぶときは、あまり興味がないものを意識的に優先させるようにしており、「憲法学」を選んだのもそれが理由でした。憲法に関する本って、どう考えても・・・つまらなさそう・・・じゃないですか???
中古で購入した4,000円以上もする(高い!!!)「痛快!憲法学」が自宅に届き、あまり期待せずに読み進めていったのですが・・・衝撃を受けました。「わたしが憲法だと思っていたものは、憲法ではなかったのだ!」という驚きが、全身をつらぬき、気づいたら分厚い1冊を読み終わっていたのです。
「痛快!憲法学」を読み終えたわたしは、完全に小室直樹先生のファンになっており、「小室直樹先生の本は、手に入るかぎりにおいて、すべて読まなければならない」という使命感に支配されていました。
そして「どうせ読むなら、時系列順に読んでみたい」と思い、『危機の構造』の次に手に取ったのが、今回紹介する『ソビエト帝国の崩壊』だったのです。
前置きが長くなりすぎましたが、簡単に『ソビエト帝国の崩壊』について紹介しておきたいと思います。
ソビエト帝国の内部崩壊
ソビエト連邦が崩壊したのは1991年。『ソビエト連邦の崩壊』の出版は1980年。つまり実際にソビエトが崩壊する11年も前にソビエト崩壊を『予言』していたのです。
『予言』という用語を使いましたが、実際には『学問的な分析による予測』です。ソビエト帝国は戦争によって他国に滅ぼされたのでもなく、まさに「内部崩壊」したのです。
なぜ巨大なソビエト連邦が、内部崩壊するハメになるのか?
ソビエト連邦には、『階級』・『経済』・『イデオロギー』の問題が山積しているものの、ソビエト連邦にはそれら重大な問題を解決することができないから、というのが小室直樹先生の予測であり、実際にそうなってしまったのですから、驚くほかありません。
さて・・・ここまでの話だけで終わるのであれば、『ソビエト帝国の崩壊』を読む意味があまり感じられないでしょう。なにせソビエト連邦という過去の超大国が内部崩壊した・・・という話のなかに、現代日本人であるわたしにとっての教訓があるのかよくわからないと思うからです。
しかし『ソビエト連邦の崩壊』を読めば、日本との共通点が山ほどあることに驚くはずです。
自民党の存在意義
ソビエトの人々にとっての共産党の存在意義は、『貧乏退治』でした。しかし経済においても経済学においても、共産主義は敗北しました。共産主義は資本主義よりも優れているのだから、資本主義の労働者よりもいい暮らしができなければ・・・共産主義に意味なんてないのです。
ここで現代日本社会に住むわたしは、『自民党』の存在意義について、どうしても考えてしまうのです。戦後自民党の大テーマは『戦後復興』でした。
戦後復興といっても重点は「軍事」ではなく「経済」にありました。みなさんご存知のとおり、経済復興は達成されました。しかしその後は、どこを目指せばいいのかわからなくなりました。
『戦争ではアメリカに負けたけれど、経済では絶対に負けない』という気持ちが、戦後復興の原動力になったことは間違いないでしょう。しかし現代日本において、そのようなメンタルをもっている日本人は『絶滅危惧種』ではないでしょうか?
果たして・・・日本人はどこに向かっているのか?
汚職の連鎖
おそらく日本の自民党の政治家に具体的なビジョンをもっている人はいないだろうと思います。ニュース報道をみるかぎり、自民党議員は政治家というよりは営業マンです。
自民党議員の頭の中を占めているのは、「パーティー券をいかにさばいて、裏金を確保するか?」というような蓄財動機です。世襲議員が多いのも、政治団体を経由すれば、相続税を払わずに子孫にお金を残すことができるからでしょう。
果たして・・・日本人はどこに向かっているのか?
上が腐ると、下も腐るのです。政治家が悪いことをやっているのだから、一般庶民も少しぐらいいいだろう・・・と考える人が多くなっても不思議ではないでしょう。
政治家は相続税をろくに払っていない。裏金議員は税金を払わずに逮捕もされないどころか説明責任を果たさない。となれば・・・カラ出張で会社からお金をだまし取ってもバチは当たらない。どうせみんなやっているのだから・・・と考えてしまうのではないでしょうか。
財布が落ちていたら拾って警察に届けるのが、日本人の美徳とされていました。その美徳が融解し、「かつての美徳」になるのも時間の問題ではないかと危惧しています。南無阿弥陀仏。