卒業 ~ 結婚した後に愛がある

激しい愛の末に結婚したとしても、それは愛のゴールではありません。結婚は、ふたりの愛がほんとうの意味で試されるスタート地点です。現実の生活は、そこから日々続いていくのですから。

幸せになる勇気

もともと愛は既婚者のものでした。しかしいつしか愛は「恋愛」と同一線上にあるものになり、恋愛と愛の線引きがあいまいになりました。しかし既婚者なら誰もが実感しているように、結婚は「ふたりの愛がほんとうの意味で試されるスタート地点」なのです。

愛と結婚の歴史」について学習すれば納得してもらえると思うのですが、ピントこない人は「アメリカ映画を変えた」とまで評価されている名作「卒業」を鑑賞するとより深く「愛」を理解できるはずです。

予告編:卒業

以下、映画のネタバレを含みますのでご注意ください。

せっかくなら名作

アメリカ映画を変えた名作の一つと名高い作品が、今回紹介した「卒業」(1967年)です。「卒業」以前のアメリカ映画は、ヘイズコードという自主規制があり「本当のこと」を映画で表現できなかったのです。

例えばヘイズコード時代のアメリカ映画では、「夫婦の寝室は別々」「ラブシーンなんてもってのほか!」という自主規制により、現代のアメリカ映画界と比較すると信じられないほど保守的でした。

しかし「本当のこと」をひたすら隠蔽する社会に対して、アメリカの若者たちはストレスを爆発させたのでした。

1960年代後半は「みんなが一致団結すれば、本当に社会を変えられる!!!」という若者の熱が最高潮に達した時代でした。日本でも全共闘運動が盛り上がっており、大学だけでなく高校や予備校までもが闘争に参加することがありました。

わたしの親戚は、「東京大学に入ったのはいいが、学生紛争のまっただ中で、大学生活を楽しむどころじゃなかった」と語っていましたが、なぜ多くの若者が鬱屈した気持ちを抱えていたのでしょうか?

期待はずれ

第二次世界大戦以降、世界の人は「未来は明るい」と信じていました。たしかに戦後復興や経済成長は達成しました。しかし1960年代後半になると、「こんなはずじゃなかった感」が先進国を覆いました。

どれだけ経済的に豊かになっても心は満たされなかったのです。心を満たすための代替手段としてアメリカではカウンター文化、アングラ文化、ドラッグ文化などが生まれました。アップルの創業者であるスティーブ・ジョブスの「Think Different」の標語が誕生したのもこの頃です。

「Think Different」とは「あなたたちは間違っている」というメッセージです。速度競争?スペック競争?そんなことがあなたたちが求めていたものなのか?あなたたちが求めていたのは、未来の希望を感じることやそのことで感じる眩暈(めまい)ではなかったのか?ならば、Macを使え……カウンター文化的なメッセージです。

そして今回紹介した映画「卒業」自体にも、カウンター文化的なメッセージが含まれています。「アメリカンドリーム」を手に入れて幸せなはずの夫婦関係の「こんなはずじゃなかった感」が描かれているのです。

卒業 VS プロポーズ大作戦

映画「卒業」には、旦那は外で好き勝手に遊んでいるのに、自分は郊外にある自宅に閉じ込められているという生活に欲求不満を抱えている専業主婦や、そのような両親のもとで育って大学を卒業し「両親や周囲の期待に沿った人生は本当に幸せなのだろうか?」と悩んでいる若者が登場します。

映画「卒業」で描かれているものは、日本のテレビドラマ「プロポーズ大作戦」(主演:山下智久、長澤まさみ)と比較すると明らかです。

具体的には「結婚式場から花嫁を連れ出す」というモチーフは、映画「卒業」でも「プロポーズ大作戦」でも共通しています。しかしラストシーンの印象が正反対なのです。

「プロポーズ大作戦」のラストはハッピーエンドです。しかし映画「卒業」のラストはハッピーエンドのはずなのに、主人公とヒロインの表情はとっても険しいのです。なぜ主人公とヒロインの表情が険しいのかといえば、自分たちにこれから待ち受ける運命が明るいものではないかもしれない……ということを自覚しているからです。

両親から全否定されるような人生を歩むことを決断した若き主人公とヒロインは、「(未来が明るいとは限らないが)それでも前に進む」という覚悟をもっているのです。その覚悟が二人の表情だけで表現されているところが感動的なのです。

本当のこと

日本ドラマ「プロポーズ大作戦」の主人公は、イケメンの山下智久が演じています。しかし映画「卒業」に登場する主人公を演じるダスティン・ホフマンは、ユダヤ系の非イケメンで背も低い(167cm)のです。

なぜ背も低く、イケメンでもないダスティン・ホフマンが主役に抜擢されたのか?もちろんそれが「本当のこと」だからです。

もともとは背が高くて青い目をした金髪のイケメン俳優が主役を演じる予定でした。しかし「君は女にフラれたことがあるか?」という映画監督(マイク・ニコルズ)からの質問に対して、金髪のイケメン俳優は「そんなわけがない」と回答。結果、背が高くて青い目をした金髪のイケメン俳優は、役をおろされることになったのです。

背が高くて青い目をした金髪のイケメンが恋愛を楽しみアメリカンドリームを手に入れる……なんてことは多くの若者の実感としては「本当のこと」ではないのです。ビジュアルからして完璧とは程遠い劣等感を抱えた男が「人とは異なる人生を歩みたい」という願望を抱きながらも「なかなか一歩を踏み出せないでいる」のが「本当のこと」なのです。

映画「卒業」の主人公は、親や周囲からの期待から卒業することに成功しました。親や周囲からの期待から卒業することはリスクでもあるのに、あえてイバラの道を歩む主人公の勇気はどこから湧いてきたのでしょうか?

答えが知りたい方は、ぜひ映画「卒業」を鑑賞してみてください!!!

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