前回の講義では「あなたはすでに、特定の物語を信じているのではないか?」「物語を受け入れることで、気づかないうちに同調圧力の中に組み込まれているのではないか?」という問題提起をしたわけですが、どうすれば同調圧力に負けないでいられるでしょうか?
森鴎外や夏目漱石は「近代的な自我の確立」の必要性を主張していましたが、残念ながら……日本人が近代的な自我を確立するのは難しいでしょう。
その理由はすでにお伝えしました。日本人には、近代の前提になった「隣人愛」や「戒律の否定」などのキリスト教的なバックボーンが何もないからです。
しかし近代的自我を確立しなくても同調圧力に負けないやり方があることがわかっています。たとえば……
タコ足化
反社会的組織は都合が悪くなると末端構成員に自首させます。政治家は都合が悪くなると秘書を見捨てます。会社も都合が悪くなるとスケープゴートを探します。
そう。もしあなたに不快な同調圧力がやってくるなら……タコが足を一本切り落として逃げるように……所属先の一つを切り捨てればいいのです。
日本ではSNSなどを通じて、安上がりなメンテナンスコストのもとで、多元的に所属集団をつくるのが当たり前になっています。
厚生労働省の発表によると、令和2年度における新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者36.9%、新規大卒就職者31.2%なのだそうです。
「新卒社員は3年以内に3割やめる」理由について「日本的美徳が失われたから」という論じ方がされています。しかし完全に嘘っぱちです。
「会社に尽くす」かのように見える日本人のメンタリティーは、特定の企業に単一的に所属することしかできなかった時代だから「しょうがなく」やっていただけの作法であることは、(詳しくは紹介しませんが)数々の研究に裏付けされています。
現代日本社会は、特定の企業に単一的に所属する必要はありません。趣味の仲間もあれば、インターネットの仲間もあれば、という具合にいろいろな集団に多元的に所属することができるのです。
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