いよいよ『性格』を変える方法について説明していきたいと思うのですが、あらためて『性格』について説明することからはじめましょう。
今回の内容は『ライフスタイルのモデル』の⑦を理解する上で役立つはずです。
- 性格を決めるのは自分。
- 但し、性格を丸ごと変えられるわけではない。
- 自分の努力で変えられる性格とは信念に関わるものであり、だからこそ性格は一瞬で変わる可能性を秘めている。
- しかしわたしたちは過去の成功体験に囚われ、「性格を変えない」という決断を下し続けているので、性格を変えることができない。
- 「決断」や「自己分析」で性格を変えようとするが、これは典型的な間違いである。考えることをやめて、起こっていることをありのままに見つめることが、性格を変える第一歩。
- 「事なかれ主義」に落ち着つくことなく、性格を変え続けるためには、不確実性を受け入れる勇気が必要不可欠。
- 「現状維持の未来」について考えれば、勇気が湧いてくる!試行錯誤を繰り返し、成功体験を積み重ねれば、性格は変わる。
性格とは何か?
『性格』(ライフスタイル)というものは、人生の課題に対処するためのマニュアルのようなものです。マニュアルの内容は、子どもの頃からの体験に裏付けられています。たとえば「誰かが私を傷つけた場合には、反撃して復讐すればうまくいく」というような信念があるならば、それは人生のある時期の「成功体験」によってつくられています。
『性格』を変えるということは、過去から現在の「成功体験」によってつくられたマニュアルを、最新版にアップデートすることを意味しています。たとえば「誰かが私を傷つけた場合には、まずは距離を置いて社会のルールで罰してもらう」というような信念に書き換えれば、『性格』は変わっていくでしょう。
『性格』というマニュアルには、『人生目標』『自己概念』『世界像』などのいろいろな情報がつまっています。『人生目標』は「自分や世界についての理想」のことです。また『自己概念』は「自分の現状についての信念」のことです。さらに『世界像』は「世界の現状についての信念」のことです。
| 【性格】 | 現状 | 理想 |
|---|---|---|
| 自己 | 自己概念 | 人生目標 (自己理想) |
| 世界 | 世界像 | 人生目標 (世界理想) |
『人生目標』『自己概念』『世界像』というのは、『性格』をわかりやすく説明するための概念(モデル)です。ですから『人生目標』『自己概念』『世界像』というものが別々に存在するというよりは、それらはお互いが矛盾しないように密接に関わっていると考えてください。
たとえば「世界は弱肉強食であり(世界像)、親ガチャに外れた自分は負け組なので(自己概念)、強者から嫌われないように立ち回らなければならない(人生目標)」という『信念』は、もしかしたら受験勉強に挫折した結果として生まれたものかもしれないのです。このような『性格』を変えるためには、どうすればよいのでしょうか?
俺はアホやから
いわゆるFランと呼ばれる大学には「俺はアホやからできひんもん」という信念をもった生徒が珍しくないそうです。
『鴨川を徘徊する魔女さん』によれば……
何度か「大丈夫、できるよ」「できたやん!ほらできるでしょ!」と繰り返していると、講義の最後の方には自信を持ってやってくれるようになったことがなん度もあった。
とのことです。ここで重要なポイントは3つあります。
1つ目は、『性格』を変える上で、原因分析や自己分析は必要ないということです。「俺はアホやからできひんもん」という信念がどうやって形成され強化されてしまったのか……という原因分析をしなくても、『性格』は変えることが出来るのです。
2つ目は、『性格』を変えるためには『勇気』が必要だということです。「俺はアホやからできひんもん」という言葉の呪縛から抜け出すためにはエネルギーが必要になります。
3つ目は、過去の成功体験の副産物である『信念』をアップデートするためには、新しい成功体験が必要になるということです。周囲の人から「あなたはアホじゃない」とアドバイスされることよりも効果があるのは、当事者本人の「自分はアホじゃない」という信念を裏付ける継続的な成功体験なのです。
もう一つ例を挙げておきましょう。
お金は汚いもの
ある小さなお店をやっている男性が、どうしても儲からないので、性格的な問題があるのではないかということで、野田俊作先生に相談したそうです。相談者の男性は、さまざまな能力開発のセミナーに参加し、「何年間でいくらいくらの預金をつくろう」「何年間で事業の規模をこれこれまで大きくしよう」などの元気のいい目標設定をしたものの、実際にはまったく実現しなかったそうです。
野田俊作先生が相談者の男性に「あなた、ひょっとして、お金を儲けることは汚いことだと思っていませんか」と問いかけたところ、相談者の男性はしばらく絶句してから、「言われるまで気がつかなかったけれど、心のどこかで、ずっとそう思っていました」と答えていたそうです。
この相談者の男性の場合、「お金を儲けるとか貯めるとかいうのは汚いことだ」という信念が、熱心なクリスチャンだった子ども時代に形成されて、『無意識』的な信念としてしっかりと相談者の人生を縛っていたのです。だから少しお金がたまってくると、本当に無意識的に損をするような慈善的な投資にお金をつぎ込んでしまって、やっと蓄えたお金があっという間になくなるということを繰り返していたそうです。
そこで野田俊作先生が、「お金を儲けることは、それだけで社会に貢献することだ」「犯罪でない限り、普通の商売をしてお金を儲けるということは、それだけで人々のために貢献している」という話を相談者の男性にしたところ、一件落着したそうです。
相談者の男性の場合、「慈善的であろう」「社会に奉仕しよう」などの『信念』が、根本的な人生目標でした。しかし「お金を儲けるとか貯めるとかいうのは汚いことだ」という信念が、人生目標と矛盾していたため、結果を出すことが出来なかったのです。
| 相談前の信念 | 現状 | 理想 |
|---|---|---|
| 自己 | 個人事業者 | 慈善活動 |
| 世界 | お金は汚い | 社会奉仕 |
そこで野田俊作先生は、人生目標(慈善的でありたい、社会に奉仕する)は変えないで、目標を追及するための手段に関わる世界像(お金は汚い)を変えることで、相談者の男性の「治療」に成功したのです。
| 相談後の信念 | 現状 | 理想 |
|---|---|---|
| 自己 | 個人事業者 | 慈善活動 |
| 世界 | 金儲けは 社会貢献 | 社会奉仕 |
自己改革のコツ
第三者がいる場合には、あの手この手でサポートしてくれるでしょう。無意識的な『信念』が不健全なものであることに気づかせてくれるでしょうし、そのために何をすべきかアドバイスしてくれるでしょう。新しい信念が根付くまで見届けてくれるかもしれません。
裏を返せば、自分で自分の『性格』を変えるには、工夫が必要であることがわかると思います。自分で自分の『性格』を変えるもっとも簡単な方法は、自分がいまやっていることを観察してみて、このままだとうまくいくか?と、問うてみることです。
レコーディング・ダイエットの話を思い出してください。レコーディング・ダイエットにおいて、重要なことは「自分の食生活」を観察するだけで、まずは何もしないことなのです。何もしていないのに、なぜ『性格』を変える勇気を調達できるのでしょうか?
それは自分の現状に対して、居心地が悪くなるからなのです。食生活というのは無意識のパターンです。ダイエットが必要な人のなかには、自分がデブになるためにデブになる努力をしているという当たり前のことに気づいていない……なんていう人も珍しくありません。
たとえば副業でデリバリー配達員に挑戦することにしたとある肥満男性は、他人の食事を運びながら「たったこれだけの量で、空腹を満たすことができるのか?」と疑問に思っていたそうなのですが、デリバリー配達中に突然、「もしかしたら自分は食べすぎなのかもしれない」と気づいたのだそうです。
そしてデリバリー配達員の男性は、他人の食事を運んでお金を稼ぎ、稼いだお金でたくさん食べては肥満体型を維持しているという現状に嫌気がさし、頑張って食べることをやめることにした結果、それだけで痩せることができたのだそうです。
デリバリー配達員の男性は、子どもの頃に母親から「たくさん食べないと元気がでないよ!」と繰り返しいわれていたことを思い出しました。そして男性の母親も肥満体型であることを思い出しました。男性は育ち盛りの頃に母親から刷り込まれたアドバイスを、いまも無意識のうちに受け入れてしまっていたのです。
デリバリー配達員の男性は、食事の量を少しだけ減らしてみました。すると驚くことがわかりました。食事の量を減らしたほうが、元気に活動できることがわかったのです。
性格を変える大前提
「わたしは正しい。間違っているのは他人だ」といっているうちは『性格』は変わりません。しかし「わたしは正しい。間違っているのは他人だ」と、ひたすら主張し続けてしまうのが人間の性(さが)でありホメオスタシスの役割なのです。
ですからまずは「このままではダメだ」ということに当事者である本人が気づくことが重要です。人間は全知全能ではありません。知っていることよりも知らないことの方が多いのです。大多数の人間は、サルよりも少し賢くて、アインシュタインよりも頭が悪いのです。
ですから「自分は馬鹿なことをしている」ということを恐れる必要はないのです。もしあなたが「何かがおかしいな」と感じるのであれば、きっとあなた自身がおかしいのです。何がどうおかしいのか知ることは、『性格』を変える上では、あまり重要なことではありません。ただ「自分は馬鹿なことをしている」ということを認めさえすれば、そこからはじめて『性格』を変えるプロセスをはじめることができるのです。
過去の挫折が原因で自分は馬鹿だと落ち込んだり、ネガティブな感情に囚われて身動きができなくなったり、ポジティブな感情に支配されて浮かれたり、他人からの評価を気にしてビクビクしたり、実現不可能な夢を追いかけたり……わたしたちが「当たり前」だと思っていることのほとんどは、「馬鹿なこと」なのです。
当たり前のことなんて何もないのです。当たり前だとあなたが受け入れている「考え」があるだけなのです。時代が変われば常識が変わり、空間が変われば文化が変わり、人間関係が変われば『性格』だって変わってしまうのです。
あなたは「自分は馬鹿なことをしている」ことを認めることができるでしょうか。「自分は馬鹿なことをしている」ことを認めれば、「このままではダメだ」ということに気づき、いろいろなことに試行錯誤する勇気が湧いてくるはずです。
【完】
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