Facebook改めMetaのマーク・ザッカーバーグCEOは、2021年の業績が精彩を欠いているのは、Appleのアプリに関するルール変更のせいだと名指しで批判しました。
マーク・ザッカーバーグの矛先は、Appleのプライバシー規制です。つまりマーク・ザッカーバーグは「(Appleが)ユーザーのプライバシーを守ると売上が下がる」と主張しているのです。どのようなからくりがあるのでしょうか?
名簿時代の進化
企業にとって(特にBtoCの企業にとって)、顧客名簿は最重要の資産です。なぜならば商売をする上でお客さんがどこにいるのかわからなかったら話にならないからです。
とはいえ名簿にたくさんのお客さんの名前を埋めるのは時間がかかります。だからこそ「マジメに商売をやって地道に顧客からの信頼を獲得する」ことが重要なのであり、だからこそ名簿そのものが『資産』になるわけです。
しかし現在では魔法のような方法が開発されています。なんと……現在では小さな名簿データを分析して、「顧客になりそうな人」を割り出し、たくさんの見込み顧客に対して広告を見てもらえる仕組みがあるのです。
そう。Facebookの広告配信システムのことです。
Facebookが提供する広告システムは、一昔前では想像もできなかったほど優秀です。Facebookの広告システムに、現在の顧客情報(メールアドレスや電話番号)を入力すると、Facebookのシステムがそのデータを分析し、「広告に反応してくれそうな人」に対して自動で広告を出稿してくれるのです。
「わたしはFacebookをやっていないから関係がない」と思うなかれ。Facebookとは一見するとまったく関係のないアプリ(例えば漫画アプリ)などにも広告は配信される仕組みになっているのです。
ですからもしあなたがスマートフォンを所持しており、無料で楽しめるなにかしらのアプリを利用しているのであれば、あなたもFacebookの提供する広告ネットワークの網の中にいる可能性があります。
iPhoneのように誰もが知っている有名な商品を販売して儲けているわけでもないのに、Facebookの時価総額がトヨタ自動車よりも大きいのには、そういった理由があるのです。
つまりテレビにとっての視聴者が、スポンサーに提供する「商品」であるのと同様に、無料アプリや無料ウェブサービスにとっても利用者はスポンサーに提供する「商品」なのです。
「自我」は金になる
ここで思い出してほしいのは『自我』の概念です。自我というものは「宇宙の中からあなたにとって重要なものだけを選び出す関数」の働きがある……という抽象的な説明をしたので、わかりづらかったかもしれません。
しかしFacebookやGoogleといった企業は、あなたが意識しているにせよそうでないにせよ、すでに長年にわたってあなたの自我の働きを解明しようと躍起になっているのです。なぜそのようなことをするのかといえば、答えはシンプルです。
あなたと似たような自我をもった人がいることを解明できれば、あなたと類似する自我をもった人が興味をもってクリックした広告は、あなたもクリックする可能性が高いと判断できるからです。
FacebookやGoogleといった企業は、広告主からお金をもらい、あなたが興味をもってくれそうな広告を、広告主のために情報発信しているのです。そしてここで重要なことは、自我の働きを解明することは、自我を変える意味でも重要な意味をもっているのです。
ケンブリッジ・アナリティカ
テレビにしてもSNSにしても、無料でそれを楽しむ利用者は「商品」です。しかしそんなことは利用者も薄々気づいています。テレビCMが流れることも、無料アプリに広告が表示されることも「しょうがない」こととして、視聴者・利用者も受け入れているはずです。
広告を出稿するスポンサーが儲かる、利用者にとっても無料で何かを楽しむメリットがある、当然テレビ局やFacebookやGoogleなどの企業も儲かる。となれば、必ずしも広告というものが存在すること自体が悪いわけではないでしょう。
しかしFacebookは一線を越えてしまいました。ケンブリッジ・アナリティカという選挙コンサルタント会社は、Facebookから提供を受けたデータを、アメリカ大統領選挙に利用してしまったのです。
ケンブリッジ・アナリティカがFacebookから提供されたデータを用いて証明したことは驚きでした。「ある人に見てもらうニュース(広告)をコントロールすることで、その人の政治的な決断を変えることができる」ということを、ケンブリッジ・アナリティカは証明してしまったのです。
共和党候補(ドナルド・トランプ)を支持する人、民主党候補(ヒラリー・クリントン)を支持する人には、それぞれ「傾向」というものがあります。例えば妊娠中絶に賛成するか反対するか?アメリカは好景気かそれとも不況か?などの質問に対して、共和党候補と民主党候補では意見が異なります。
そこでSNS広告の出番となります。特定のテーマに関する広告を流し、その広告を視聴したら、ある特定のテーマについて特定の思想に傾くように誘導するのです。すると「気づいたらドナルド・トランプの支持者になっていた」というような状況を生み出すことができるのです。
ケンブリッジ・アナリティカ騒動について詳しく知りたい方は、Netflixのドキュメンタリーが参考になります。興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。
■ 『進化』を学べる映画
