他人は地獄だ ~ 出口のない競争社会

『LINEマンガ』アプリの運営会社が一時期盛んに宣伝していた、「他人は地獄だ」という漫画の実写版韓国ドラマを紹介します。

予告動画)他人は地獄だ

出口なし

「他人は地獄だ」というタイトルは、『出口なし』という戯曲が元ネタなのでしょう。『出口なし』は、フランスの哲学者ジャン=ポール・サルトルの戯曲で、フランスがドイツに支配されていた1944年に発表されたものです。

『出口なし』はこんな話です。登場人物はガルサン(男)、イネス(女)、エステル(女)の3人です。3人は死んで地獄に堕ちたと思ったら、そこは普通の部屋でした。

エステルは「わたしは何も悪いことをしていないのに、地獄に堕ちたなんて、何かの間違いよ」と言い、イネスは「わたしたちに何かの罪があるはずだから、お互いにその罪を探るために告白しましょう。」といって、3人は自分の人生を告白していきます。

その結果、実は3人とも罪深い人生を送ってきたことが発覚します。ガルサンは、女たらしで奥さんを傷つけた過去がありました。またイネスは逆に男を憎んでいるレズビアンで、人の心を操って傷つけてきました。さらにエステルは、非常に美しい女性で、愛がないのに金持ちの男と結婚して、浮気をして生んだ子どもを窓から投げ捨てたことがありました。

3人は密室のなかでお互いの告白を聞き、お互いを責め合いながら、どんどん精神的な地獄に落ちていって三つ巴の三すくみになっていくのですが、ガルサンは「ここはやっぱり地獄なのだ」と確信するに至ります。

つまりガルサンは「地獄というのは他人のことだ」と確信するわけです。他人とはどうしても理解し合えない、受け入れてもらえない、他人こそが地獄なのだ……というわけです。

『出口なし』の後半では、密室のなかの地獄から抜け出すためにエステルがイネスをナイフで刺すんですが、刺しても死なないのです。なぜならばもう死んでいるからです。死にたくても、他人を殺したくても殺すこともできない。まさに『出口なし』。

不安スパイラル

映画『他人は地獄だ』の世界観は、まさに「不安スパイラル」そのものです。アジア通貨危機を発端にして1997年に韓国はデフォルトし、IMF(国際通貨基金)から救済されたはいいものの、結果として韓国経済は外資に喰われるハメになります。

韓国企業に外資が侵食した結果として韓国企業は強くなり、2019年には平均賃金では日本を追いこすまでに成長しますが、その反面、『経済格差』が無視できないほど大きくなり、「ヘルコリア」(韓国は地獄)という言葉が流行したこともありました。

主人公のユン・ジョンウは、田舎からソウルに上京してきて、とにかくお金に余裕がありません。結果的に考試院(コシウォン)というトイレ・風呂・リビングが共同の簡易宿所に住むハメになり、周りの幸せそうな人たちが全員「敵」に見えてくるほど精神的に追い詰められていくのです。

結論からいえば、映画『他人は地獄だ』には、救いがほとんど描かれていません。不安スパイラルの結果生まれる負の遺産である「ひきこもり」「アダルトチルドレン」「脱社会的存在」(連続殺人鬼など)に囲まれて、ひたすら追い詰められていきます。

不安スパイラルを回せば回すほど、基本的には追い詰められていきます。あなたは追い詰められる前に逃げることができるでしょうか?

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