熱い嵐 ~ 『政治家』の覚悟

日本の明るい将来を誰もが疑わなかった時代がありました。バブル前の日本において、経済専門家のなかには「日経平均株価は3万円を突破する」と予測した人までいたほどです。

しかし日本社会の劣化が止まりません。東京オリンピックの開会式をみても、コロナ対策をみても、経済対策においても、いろんな意味で「日本社会は大丈夫じゃないかもしれない」と不安に駆られている人も珍しくないでしょう。

「政治家は何をしているんだ!」と怒っている人もいるかもしれませんが、かつて日本にもちゃんとした『政治家』がいたのです。

日本の『政治家』

高橋是清は日本の『政治家』でした。ここでいう政治家とは「仲間を守るために法をやぶる人」のことです。

例えば昭和2年(1927)の「昭和金融恐慌」に、預金者が銀行に殺到する取り付け騒ぎが現実のものとなった時……高橋是清は「全国の銀行を休業するよう指示」し、「紙幣を大量に刷る指示」を出しました。

高橋是清は200円札(2020年時点の価値に換算すると13万円ほど)を大量に刷るために、「表面」だけ印刷させて「裏面」は白紙でもOKという無茶な指示を出したのですがこれが大正解。

銀行に殺到した預金者は、窓口に山のように積まれた200円札を見て安心し、日本は昭和金融恐慌を乗り切ることができたのです。ここで押さえておきたいポイントはそれらの指示すべてが大蔵大臣である高橋是清の決断によって下されたということです。

そもそも当時は200円札なんて存在しませんでした。紙幣の最高額は100円札。その2倍の価値のある紙幣を刷らせるだけでなく「表面だけ印刷しろ!!!」と命令するなんて……この一つのエピソードだけでも高橋是清が並みの政治家ではないことがわかるでしょう。

さて、高橋是清の人生には学ぶところが多いのでまた別の機会に必ず取り上げたいと思っているのですが、今回さしあたって伝えたいことは『政治家』が日本を変える可能性についてです。

高橋是清自伝

高橋是清の人生をマジメに取り上げた作品はわたしの知る限り「熱い嵐」(Paraviでのみ配信)のみ。「熱い嵐」の予告動画も手に入らないので、有名YouTube番組の動画を載せておきます。

高橋是清の覚悟

高橋是清にあって、現在の日本の政治家にないものはなんでしょうか?その一つは明らかに「殺される覚悟」です。

経済対策をする政治家は恨まれて当然です。なぜならば「全員にとってよい経済対策」というものは存在しないからです。政治家の経済対策によって生活がよくなる人もいれば、悪くなる人もいます。

だから当時の政治家は当たり前のように命の危険に晒されていましたし、実際に高橋是清も「殺される覚悟」で仕事を引き受けていました。

現代日本人のわたしたちからすれば「殺される覚悟なんて大袈裟だ……」と思うかもしれませんが、当時は「殺される覚悟がなければ仕事ができない」というような時代だったのです。

事実、高橋是清だけでなく、井上準之助、浜口雄幸といった当時有力な大蔵大臣は全員が殺されています。浜口雄幸に至っては、鉄砲玉が腹にあたったとき「男児の本懐!!!」と叫んだとか。

かつてあったもの

前例があろうがなかろうが、やらなければならないことを責任をもってやる」政治家が、かつての日本にはいたということは覚えておく価値があることです。そして国民にも「高橋是清が大蔵大臣なら大丈夫」という信頼がありました。

今の日本には政治家の国民に対する信頼もなければ、国民の政治家に対する信頼もありません。世界の先進国がたくさんの失敗をしながらも変化していくのに、日本だけが変わらないのは偶然ではないのです。

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