ニュースの真相 ~ メディアの限界を決めるわたしたち

わたしたちの社会生活は決断の連続です。しかし問題があります。「事実に基づいた正しい情報がなければ、正しい判断ができない」のに、わたしたちは情報そのものの正しさを検証することができないのです。

そのため「メディアは事実を報じている」のにわたしたちがその事実を受け止められない可能性だってあるのです。

予告動画)ニュースの真相

これ以降の内容は、ネタバレも含みますのでご注意ください。

新たな疑惑

2004年にCBSテレビは、ブッシュ大統領が過去に『兵役逃れ』をやっていたのではないか?という疑惑を報じました。

ベトナム戦争のとき、アメリカの富裕層は息子が戦地に駆り出されることを憂いました。そこで「州兵」に登録させることでベトナム行きを免れる手法が編み出され、ブッシュ大統領もその手法を利用したというのです。

もしそのようなことが本当に行われていたとすれば批判されるのは当たり前で、そんな「チキン野郎」が合衆国大統領だなんて認めるわけにはいかない……と怒るアメリカ人がたくさんいました。

しかしニュースの翌日に明らかになったのは、「ブッシュが兵役逃れをしていた」という証拠が嘘なのでは?という新たな疑惑だったのです。

人間は非合理な存在

伝統的な経済学には「人間は合理的な存在である」という前提があります。しかし人間は非合理な存在です。というよりむしろ非合理な存在であるからこそ人間なのです。

人間が非合理な存在であることを認めた上で、非合理な人間にはどのような傾向があるか?ということを研究しているのが「行動経済学」です。

そして映画「ニュースの真相」を観たわたしたちは、「行動経済学」という枠を超えて、自分も含めた人間が非合理な存在であることを認めざるを得ないでしょう。どういうことかというと……

ハメられた可能性

「ブッシュが兵役逃れをした」という証拠が10個あるとして、そのうちの1個が間違っていたとしても「ブッシュが兵役逃れをした」という事実が即座に否定されるわけではありません。

しかし現実にはCBSテレビが直面したのは、「証拠のうちの1つが間違っていたのだから、ブッシュ大統領は兵役逃れをしていない」という世論の驚くべき反応だったのです。

しかもCBSテレビがブッシュの兵役逃れを報じた翌日に、CBSですら気づかなかった、証拠の「怪しい点」が匿名のブログによって暴露される……という経緯を踏まえれば、むしろCBSテレビはハメられたかもしれないのです。

苦しい立場

「誤報メディア」としてレッテルを貼られたCBSテレビは苦しい立場に置かれます。理由は2つ。

1つ目の理由。報道機関として「情報ソースを守る」という建前を破るわけにはいかないため、情報ソースに責任を転嫁することができない。

2つ目の理由。「自分たちはガセネタをつかまされた」と自己正当化すれば即座に「自らの過ちを認めずに正当化するなんて本当に信頼できないメディアだ」と追及されるリスクが高い。

以上2つの理由により、CBSテレビは「ブッシュ大統領の兵役逃れ報道」について大きな責任を負うことになってしまうのです。

わたしたちは「メディアがハメられている」可能性があり、メディアが1つの誤報をしてもすべての報道が誤報であるとは限らない……という前提で報道に接することができるでしょうか?

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