牛久 ~ おもてなしの国、日本

2022年3月2日、岸田総理大臣はロシアによる軍事侵攻でウクライナから第三国に逃れた避難民の一部を受け入れる考えを表明しました。

事の成り行きは、注意深く見守る必要があります。なぜならば残念なことに……というか信じられないことに……日本は難民申請をしている人たちを徹底的にいじめる国だからです。

予告動画)牛久

これ以降の内容は、ネタバレも含みますのでご注意ください。

日本人の無教養

日本人のほとんどは「難民」について考えたこともないし、茨城県の牛久(うしく)に難民を閉じ込めている施設があることを知らないでしょう。

安倍晋三元総理大臣も、海外の記者から「日本はなぜ積極的に難民を受け入れないのか?」という趣旨の質問を受けて「女性の活躍、高齢者の活躍のほうが先」などとトンチンカンな回答をしていたぐらいですから、あなたもきっと日本の難民行政についてよく知らないでしょう。

そこで本題に入る前に、ありがちな誤解を解いておこうと思います。

移民はいらないのですが?

難民と移民を混同する人たちが多いのですが、難民は移民ではありません。難民とは、自国に帰れば迫害されるなど命の危険がある人たちのことです。

難民を受け入れるか受け入れないか?という問題は、日本国内の経済的な問題というよりはむしろ国際社会で日本がどのように振舞うか?という政治的な問題です。

難民の定義

人種、宗教、国籍又もしくは社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者または恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者。

【難民の地位に関する条約 第一条】

難民を受け入れる必要が?

「そもそもなぜ日本が難民を受け入れなければいけないのか?税金の無駄だからさっさと強制送還すればよろしい!」という意見もありますが、日本は1981年に難民条約に加入しています。

難民を受け入れたくなければ、難民条約を破棄すればいいのですが、日本は難民条約を破棄していません。難民条約に加入していながら、ほとんど難民を受け入れないことが問題視されているのです。

税金の無駄遣いでは?

コロナ禍において東日本入国管理センターは、それまで施設に閉じ込めていた難民申請中のひとたちを大量に仮出所させて施設から追い出しました。

そもそも閉じ込める必要のなかった人たちを閉じ込めていたのであり、東日本入国管理センターはそもそも必要性のない仕事のために国民の税金を使っていたのです。

なぜ強制送還しないの?

難民の地位に関する条約には、「ノン・フルマンの原則(non-refoulement)」というものがあります。難民申請中の人たちを追放および送還することを禁止する原則のことです。強制送還された場合に、生命が脅かされる可能性のある人たちを強制送還することは非人道的な行為として禁止されています。

ノン・フルマンの原則

締結国は、難民を、いかなる方法によっても、人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見のために、その生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放しまたは送還してはならない。

【難民の地位に関する条約 第三十三条】

不法滞在者なんでしょ?

牛久などの入管施設で管理されている外国人は、難民申請をしたものの却下された結果として不法滞在者になってしまった人たちです。窃盗などの犯罪をした結果として犯罪者になったわけではありません。

義務を履行しないのはなぜ?

世界最大の国際人権NGOであるアムネスティ・インターナショナルが「難民歓迎指数」を国別に調査しているのですが、なんと……日本は調査結果そのものから除外されています。「そもそも日本に質問しても意味がない」と国際的には認識されているのです。

日本人の難民に対する平均的な意見は、「難民なんて受け入れたくありません」でしょう。

もちろん同様の意見をもっている人は世界中にたくさんいるのですが、日本は先進国のなかでも突出して「難民なんて受け入れたくありません」という人が多いのです。

なぜ日本には「難民なんて受け入れたくありません」という人が多いのでしょうか?

日本人には社会がない

その理由は日本には「国際社会(公:おおやけ)の一員」という意識がほとんどないからです。日本人にあるのは滅私奉公です。つまり自分が所属する組織がイコール「社会」なのです。

一方で先進国における「社会」とは、自分の所属集団だけでなく、他人の社会集団もすべて共通の土台となっているプラットフォームというイメージです。

なぜ日本人にはプラットフォーム(つまり社会)の意識というものがないのでしょうか?それは日本では市民革命が起こらなかったからです。

欧米人には「今の自分たちの生活は、自分たちが勝ち取ったもの」という意識があり、それを語り継いできた歴史(憲法!)がありますが、日本人は同様の意識がまるでないのです。

社会という概念がないとどうなるのか?ズバリ「何事も他人事」「何事も自己責任」ということになります。日本人が同じ日本人を自己責任論を理由に救済しない背景には、そういった事情があるのです。

■ 社会を学べる映画集

『社会』を学べる映画