未来⇒現在⇒過去

前回の講義では「人は過去に生きている」ということの本当の意味を明らかにしました。私たちの目の前にある世界は、過去の記憶から合成された「現実」でしかないのです。

だからこそ、あなたが髪を切ったのに周囲の人が気づいてくれない……ということが起こりうるのです。あなたの周囲の人たちは、あなたを過去の記憶をベースに認識しているので、あなたが髪を切っても気づかないことがあるのです。同様に、あなたも他人を過去の記憶をベースに認識しているので、他人が髪を切っても気づかないかもしれないのです。

わたしたちはついつい、過去の延長線上に現在というものがあり、現在の延長線上に未来があると考えてしまいます。過去が現在を決め、現在が未来を決めるというのは、もっともらしい説明です。しかしもしあなたが現在の延長線上にある未来を望んでいない場合には、どうすればいいのでしょうか?望まない未来でも受け入れるしかないのでしょうか?

過去の歴史

あなたは過去は事実である以上、変えられないと思っているかもしれません。しかしそうではないのです。例えば歴史の教科書を今と昔で比較すると、たくさんの変更点が見つかります。

具体的には「いい国(1192年)作ろう鎌倉幕府」は「いいはこ(1185年)作ろう鎌倉幕府」になり、江戸時代の「士農工商」はなくなり「武士と町人・百姓」という説明になっています。(参考:ここまで変わった日本史教科書

なぜ変わったのか?答えは、新しい研究結果によってです。つまり現在の解釈によって過去は変わるのです。しかし本当に面白いのはここからです。

現在の歴史

歴史の教科書を例にして、過去を決めるのは現在であることを明らかにしました。過去という結果を生む原因は現在にあるのです。では現在の解釈を決めるのは一体なんでしょうか?

そう。過去を決めるのが現在である以上、現在を決めるのは未来しかありません。そのことを理解すると、かなり気持ちが楽になるはずです。

例えばあなたには後悔していることがあるかもしれませんが、その後悔はあくまでも現在が生み出したものにすぎないのです。現在が不幸な人は、過去に不幸の原因を見つけるのであり、逆に現在が幸せな人は過去に幸せの原因を見つけるのです。つまり過去に不幸(幸福)なことがあったから現在が不幸(幸福)なのではなく、現在が不幸(幸福)だから過去を不幸(幸福)と感じるのです。

同様に、未来が明るいと信じている人は現在に幸せの原因を見つける一方で、未来が暗いと信じている人は現在に不幸の原因を見つけるのです。つまり現在が不幸(幸福)だから未来が不幸(幸福)になるわけではなく、未来における不幸(幸福)の予測が現在の不幸や幸福を決めているのです。

ニュートン力学の世界

時間は未来から現在そして過去に流れる……というもしかしたら聞いたことのない話をしたかもしれませんが、それも仕方がないことです。ほとんどの人は時間の流れを過去⇒現在⇒未来に流れるものとして考えているからです。

もちろん高校の物理で習うようなニュートン力学の世界では、過去⇒現在⇒未来という時間感覚のほうがむしろ正しいのです。例えば石を投げたら別の石にぶつかって、その石が動く・・・といった具合に明らかな因果関係があります。

しかし物理空間(五感で扱える世界)の時間感覚(過去⇒現在⇒未来)を、情報空間(頭の中の認識の世界)にそのまま当てはめようとするとから誤ってしまうのです。

そもそも情報空間の世界における因果関係はあいまいです。例えば同期に出世競争で負けたサラリーマンが、自分が出世できなかった原因を思いついたとします。しかしあくまでもそれは「原因だと自分が思っていること」なのであって、数ある因果関係のなかの一つでしかないのです。

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