性格をアップデートせよ!

これまで「性格を決めるのは自分」という言い回しをしてきました。つまり「自分」と「性格」は、それぞれ別のものだということを前提にしているのですが、このあたりで「自分」と「性格」について、あらためて整理しておきましょう。

今回の内容は『ライフスタイルのモデル』の③を理解する上で役立つはずです。

提案)ライフスタイルのモデル
  • 性格を決めるのは自分。
  • 但し、性格を丸ごと変えられるわけではない。
  • 自分の努力で変えられる性格とは信念に関わるものであり、だからこそ性格は一瞬で変わる可能性を秘めている。
  • しかしわたしたちは過去の成功体験に囚われ、「性格を変えない」という決断を下し続けているので、性格を変えることができない。
  • 「決断」や「自己分析」で性格を変えようとするが、これは典型的な間違いである。考えることをやめて、起こっていることをありのままに見つめることが、性格を変える第一歩。
  • 「事なかれ主義」に落ち着つくことなく、性格を変え続けるためには、不確実性を受け入れる勇気が必要不可欠。
  • 「現状維持の未来」について考えれば、勇気が湧いてくる!試行錯誤を繰り返し、成功体験を積み重ねれば、性格は変わる。

自己・性格

性格を決める「自分」という概念は、宗教・哲学・心理学などの領域において、自己や自我などという言葉で説明されてきました。自己とか自我という言葉に一般的な定義はないのですが、ここでは性格を決める「自分」のことを『自己』と呼ぶことにします。

『自己』は、数学における点、物理における質点のようなものだと考えるとわかりやすいでしょう。点や質点がモデルであるのと同様に、自己もモデルだということです。つまり点や質点には面積がないと仮定するのと同様に、決断の主体である自己にもキャラや性格といったものは一切ないと仮定します。

一方の『性格』は、辞書のようなものです。人生の課題に直面したときに、『自己』はどのような判断も下すことができません。なぜならば決断の主体である『自己』には、キャラや性格というような傾向が一切ないからです。『自己』は、人生の課題にどのように対応するのでしょうか?

決断の主体である『自己』は、『性格』を参照することで人生の課題に対応すると仮定します。たとえば仕事で同僚と口論になった時、『性格』という名のマニュアルを参照して、「自分は悪くなくて相手が悪いと感じる場合でも、とりあえず頭を下げる」とマニュアルにあれば、それを参考にして『自己』は行動を決めるのです。

自己と『性格』の働き

ここであらためて強調しておきたいのは、『自己』や『性格』の定義や、人生の課題に直面したときの『自己』や『性格』の役割は、あくまでもモデルであるということです。むしろ『自己』と『性格』がそれぞれ独立のものであるという前提があるからこそ、「性格は変えることができる!」と主張できるわけです。

たとえば物心がついた時からずっと「自分は悪くなくて相手が悪いと感じる場合でも、とりあえず頭を下げる」というマニュアルを参照している場合であっても、あるタイミングから「自分は悪くない場合には頭を下げず、まずは相手の意見をじっくり聞く」というマニュアルを参照することができれば、行動を変えることだってできるのです。

仮に『自己』と『性格』が同一のものであれば、どうなるでしょうか?きっと性格を変えることはできないでしょう。なぜならば人生の課題に直面したときに、『自己』つまり『性格』は条件反射的に行動を決めることになるからです。『自己』つまり『性格』に、「自分は悪くなくて相手が悪いと感じる場合でも、とりあえず頭を下げる」と書き込まれている場合には、「ひたすら頭を下げる」に違いないのです。

『性格』は修正できる!

要するに『自己』と『性格』がそれぞれ独立しているモデルを採用するからこそ、性格を変えることができるのです。もちろん『性格』という名のマニュアルの内容は、常に正しいとは限りません。アドラー心理学者の観察によれば、『性格』は思春期が終わる頃には固定されるそうですから、大人になるにつれてマニュアルの内容が、次第に時代遅れになることは避けられません。

ですから時代の変化や周囲の状況に合わせて、マニュアルの内容は修正していく必要があるわけですが、もちろん性格を丸ごと変えるなんてことは、非現実的でしょう。なぜならば無意識的な行動パターンを性格というわけですが、フロイトの【無意識】的な【性格】の内容は、そもそも言語化されていなかったり、解読不能だったり、解読できても修正できなかったりするからです。

たとえば人間の遺伝子情報は人類の歴史上、ほとんどの期間、解読不能だったわけですが、科学の進歩によって現代ではほとんど解読されています。しかし遺伝子情報が解読されているからといって、大人の遺伝子情報を途中で書き換えるなんてことは非現実的でしょう。すでに生まれてきた人間の遺伝子を書き換えることによって、後天的に身長を伸ばしたり、暗い性格を明るくしたり・・・なんてことはできないのです。

しかし……『無意識』的な『性格』については、修正することもできるのです。なぜならば『無意識』的な『性格』は、言語化できるからです。もちろん『無意識』的である以上は、『性格』の内容について、常日ごろから意識している……なんて人は、ほとんどいないでしょう。とはいえ目の前で起きていることを冷静に観察してみたり、『性格』について他人から指摘してもらえるチャンスを逃さなければ、マニュアルの内容を吟味することだって、不可能ではないのです。

たとえばどうしても部屋を整理整頓できない女性がいるとします。そしてその女性の事情をよくよく聞いてみると、部屋を整理整頓できない背景として、「元カレとの思い出のつまった品を目にしたくない」という事情があることが判明したとします。つまりこの女性の『性格』という名のマニュアルには、「元カレとの思い出のつまった品を目にしたくないので、そのまま放置するのが吉」と書かれていることが推測できるわけです。

もちろん部屋を散らかったままにするという選択肢もあるわけですが、仮に部屋を整理整頓できないという状況に変化をつけたい場合には、『性格』という名のマニュアルを書き直すことで、対処できるわけです。

たとえば「元カレとの思い出のつまった品を目にしたくないので、部屋を整理整頓しようとする努力は諦めて、過去のものはそのまま捨てる」と『性格』の内容を書き換えて、その最新の『性格』の内容に従って行動すれば、結果的に部屋の中をキレイにできるかもしれないのです。

マニュアルを更新せよ!

『性格』という名のマニュアルの内容を『信念』と呼ぶことにすると、『信念』を書き換えることでわたしたちは行動を変えることができるのです。もちろん「あなたの信念はなんですか?」と質問されたところで、「わたしの信念はコレコレです!」と自信をもって回答できる人はほとんどいないでしょう。

しかし日常生活の中で『信念』の具体的な内容に無自覚であったとしても、わたしたちの『信念』は思考・感情・行動にとても大きな影響を与えているのです。たとえば「火のないところに煙は立たないのだから、噂のほとんどは真実である」という『信念』をもっている人は珍しくありません。たとえばお笑い芸人のスマイリーキクチさんは、インターネット上で流布された「スマイリーキクチは、女子高生コンクリート詰め殺人事件の実行犯」というデマに長期間苦しめられました。

そのためスマイリーキクチさんは、「火のないところに煙は立たないのだから、噂のほとんどは真実である」という『信念』を否定するために、「火のないところに煙を断たせようと、デマを拡散する人はたくさんいるので、くれぐれも注意する必要がある」と啓蒙する活動に熱心に取り組んでいます。ラジオ・テレビ・新聞時代にはある程度通用した『信念』であっても、インターネットが当たり前の社会においては、害悪になることだってあり得るのです。

ここで強調しておきたいことは、マニュアルの内容を常に最新のものに書き換える努力が必要だということです。子どもの頃に培った『性格』に書かれている内容つまり『信念』そのままだと、周囲から「子どもっぽいやつ!」と疎(うと)まれてしまうかもしれません。また昭和の時代に最適化された『信念』のまま令和の時代を生きようとすれば、「あの人は老害を巻き散らしている!」と批判されてしまうかもしれないのです。

あなたは『信念』の内容を修正し、『性格』を変えることができるでしょうか?

■ 次はコチラ

成功体験と修正機能

■ 自己啓発の記事一覧に戻る

アドラー心理学と自己啓発