白い牛のバラッド ~ あなたは死刑に賛成ですか?

OECD加盟国で死刑がある国はアメリカと日本だけです。2021年7月1日にはアメリカのバイデン政権が、トランプ政権下で17年ぶりに再開された連邦レベルでの死刑の執行を一時的に停止すると発表しました。実質的にOECD加盟国で死刑のある国は「日本だけ」といっていいでしょう。

つまり実質的にOECD加盟国で死刑制度があるのは「日本だけ」なのですが、日本人の大半は「死刑賛成」なのです。2019年の内閣府の調査によれば、『死刑容認』は80.8%、『廃止』は9.0%、『わからない』は10.2%という結果が出ています。

なぜOECD加盟国のほとんどは死刑を廃止したのでしょうか?

白い牛のバラッド

これ以降の内容は、ネタバレも含みますのでご注意ください。

イランで上映禁止

今回紹介する「白い牛のバラッド」の舞台となっているイランでは、検閲により上映許可が下りずにいまだに上映されていません。宗教の掟が社会の法として通用しているイランでは、死刑禁止を訴える映画を上映することは反政府活動になるからです。

映画のタイトルになっている「白い牛」は、もちろん「無実の人」のメタファーです。白い牛といえば旧約聖書の申命(しんめい)記を思い出します。

モーセは、イスラエルの民に以下のように伝えています。

何者かに刺殺された者が野に放置されているのを見た場合、殺された者の町の近くの町の者もそのまま見捨てておかず殺人犯を探すこと。もし殺人犯が見つからない場合は、事件をそのままにしておかずに使役にも使ったこともない雌の子牛を身代わりとして首を折り、以後はその事件に関して罪のない者の血を流すことがないようにと教えている。

【出典:クリスチャン新聞

イランでは「目には目を歯には歯を」を地でいくキサース(同罪報復刑)が実施されているのですが、もし冤罪だったら……取り返しがつかないことになります。

しかしイランでは冤罪が発覚しても「それが神の思し召し」の一言で済まされてしまうのです。本当に死刑は必要なのでしょうか?

死刑を擁護する理屈

刑罰の効用は3つあります。

刑罰の効用
  • 犯罪抑止
  • 感情的回復
  • 社会的意思表示

「死刑があれば殺人などの重罪が減るはずだ」と考えるのが「1.犯罪抑止」の考え方です。そして被害者(や残された親族)の視点にたったときに加害者を死刑にして「スッキリする」のが「2.感情的回復」の考え方です。さらに「殺人。ダメ。絶対。」というような意思を死刑という制度を通じて表明するのが「3.社会的意思表示」の考え方です。

死刑を廃止した国は、死刑では「1.犯罪抑止」や「2.感情的回復」の機能を死刑が果たせないという結論に至りました。

まず「1.犯罪抑止」について。軽微な罰を(例えば、万引き)重罰にすれば犯罪抑止効果になります。しかし「カッとなって犯す」殺人や「計画的にやる」殺人などは、死刑制度が抑止効果につながらないのです。

次に「2.感情的回復」について。加害者を殺せば、確かにその瞬間は救われるかもしれません。しかし死刑を実行した瞬間に、永遠に加害者とのコミュニケーションの可能性が断ち切られてしまいます。死刑にするのではなく、塀のなかで「なぜ犯罪を犯したのか?」ということを加害者に問うことのほうが、被害者にとっては優れた感情的回復機能を果たすこともあり得るのです。

唯一否定しにくいのが「3.社会的意思表示」です。なぜならば「殺人。ダメ。絶対。」というような主張には、なかなか反論しづらいからです。そのため日本(の法務省)は、「3.社会的意思表示」を盾に死刑制度の存続を図っているのです。

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