わたしたちのあらゆる消費活動はコントロールされています。お金の権力者は、大衆の消費活動をコントロールすることで、人間の思考そのものを支配下に置いているのです。
そこで今回の講義では、わたしたちの消費欲がコントロールされている実態を解説します。
消費のコントロールの証拠
わたしたちの消費活動がコントロールされている証拠は、あらゆるところで見つけることができます。
ブランド物のバッグ
マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツは、誰もが知る有名人であり大金持ちです。ビル・ゲイツ氏は、ジーンズとTシャツといういでたちです。飛行機の移動でもエコノミークラスに好んで乗っています。
また米国大統領のドナルド・トランプ氏の好物は、マクドナルドのハンバーガーです。生きる伝説の投資家ウォーレン・バフェット氏の大好物もマクドナルドです。
その一方で日本の若い女性は、ブランド物のバッグが大好きです。ブランド物のバッグは安くはありません。彼女たちは少ない月収のなかから、ブランド物のバッグを買うためにやりくりします。場合によってはクレジットカードで分割払いにしてまで、高額のバッグを購入するために働いています。
明らかにバカげたことだと思いませんか?なぜこんなバカげたことが起こっているのでしょうか?その理由は単純です。消費をコントロールされているからです。「ブランド物のバッグをもっている人がオシャレ」というイメージを受け入れてしまっているのです。
流行のファッション
Tシャツ1枚で10万円もするハイブランドでは、「見せかけの芸術」を演出します。デザインを変更し、色を工夫し、わざと流行遅れを演出するのです。そして新しいものを購入してもらうのです。
そして流行遅れとなった服は、アウトレットで販売されることもありますが「焼却処分」されることも珍しくありません。商品を焼却処分することで、供給量を恣意的に減らし、ブランドの価値を保っているのです。
なぜ1枚10万円のTシャツを焼却処分できるのか?答えはカンタンです。Tシャツ1枚に10万円の価値なんかないからです。
どこに10万円の価値があるのでしょうか?答えはカンタンです。Tシャツ1枚の価値は、消費者1人ひとりの頭のなかにあるのです。
ダイヤモンドの指輪
婚約するとき、結婚式のとき、「ダイヤモンドの指輪が欲しい!」という女性は多いでしょう。男性であれば「月収の2か月~3か月分もする」ダイヤモンドの指輪を実際に購入した人も多いのではないでしょうか?
かつての日本には婚約、結婚式のときに「ダイヤモンドの指輪」を送るなんて習慣はありませんでした。夢のない話ですが、ダイヤモンドの輝きは永遠ではありませんし、突き詰めればダイヤモンドは「炭素」です。
また貴金属としての希少性でいえば、ルビーのほうがダイヤモンドよりも希少です。しかしアメリカでも日本でも、そして近年では中国でも、愛する女性に婚約・結婚時にダイヤモンドをプレゼントする男性は増加しています。
もはやダイヤモンドは「必需品」としての地位を確立したように思えます。なぜ婚約・結婚時にダイヤモンドが必要なのでしょうか?
答えは簡単です。「永遠の愛」=「ダイヤモンド」という図式を仕掛けた人がいるからです。
「婚約・結婚時にはダイヤモンドがなきゃはじまらない」という価値観を生み出したのは、アメリカの広告代理店に勤める一人の女性でした。彼女の名前はマリー・フランシス・“フランセス”・ジェレティ(Mary Frances Gerety)といいます。
彼女は芸能人(オードリー・ヘプバーンなど)にダイヤモンドをプレゼントし、大衆の心のなかにダイヤモンドの価値を植えつけることに成功したのです。
長年にわたる啓蒙活動によって、ダイヤモンドの価値は、愛を超えることになります。その証拠に「ダイヤモンドの指輪をもらえなければ、結婚する気が失せる」と堂々と主張する女性まで出現するようになりました。
美味しいワイン
ワインを心の底から「美味しい」と思う日本人はそれほど多くないはずです。しかし「ワインは美味しくない」と主張しようものなら、「あいつは野蛮人だ」という扱いを受ける場合もあります。
なぜ、ただのワインが高額で取引されるのでしょうか?
答えは簡単です。「複雑な味わいを理解できる人がスゴイ人」とか「こういう味が高級な味なんだ」と刷り込まれているからです。
以前、某バラエティー番組で「高級イタリアンレストランだと嘘をついてレトルト商品を提供したら、客はどういう反応をするか?」という企画をやっていました。300円弱の冷凍パスタを食べたあるお客さんは、「うーん、やっぱり違うよね!」なんて会話をしていたので、わたしは驚きました。
またお客の一人はデザートとして提供されたガリガリ君に対して、「ガリガリ君に似ているけど、このデザートはガリガリ君よりもずっと味が上品だよ!」と意見をのべていました。
なぜ、ただのレトルト商品が高級レストランの味に化けたのでしょうか?
答えは簡単です。「高級レストランの雰囲気のなかで食事をすると美味しく感じるから」です。舌で味を感じているのではなく、インプットされた情報で味を認知できるほどに、人間の脳は複雑な情報処理を実行できるのです。
美女と車
ダンディーな男性が運転する車の助手席に座っている美人女性がニッコリとほほ笑む……そんな車のCMをみかけたことはありませんか?
残念ながら大多数の男性は、美女を助手席に乗せるような生活をしているわけではありませんので、世の男性は「いいなぁ~」と思うわけです。
そうして移動手段でしかないはずの車に「女性からのウケがいい」とか「社会的なステータス」という付加価値が加わっていくというわけです。
もはや一部の車には、移動手段という役割をはるかに超えた「何か」があることは、多くの男性が同意してくれるのではないでしょうか。
自分で決めている?
以上、消費欲がコントロールされている証拠を紹介しました。わたしたち人間はコントロールされやすい生き物です。またわたしたちがコントロールされているものは「消費欲」だけではありません。
たとえば選挙当日になると、立候補者のポスター掲示板を眺めながら「なんとなく」1票を投じる立候補者を決めていそうな人を見かけませんか?立候補者の顔が重要なのでしょうか?
テレビ番組で大好きな芸能人が好き勝手に話していると、「あれ?」と思うようなことがあっても、「●●さんがいうならしょうがない」という気持ちになることありませんか?
わたしたちが「自分で決めている」と信じていることは、自分がそう信じているだけで、実際には第三者に操作されている可能性も十分あるということは頭の片隅に入れていくとよいでしょう。
たとえばあなたは「イタリア」にどんなイメージをもっていますか?
イタリア人=「陽気な人たち」というイメージをもっているかもしれませんが、なぜイタリア人の知り合いや友人が一人もいないにも関わらず、イタリアにいいイメージをもってしまうのでしょうか?
イタリアといえば、たとえばフェラーリ、F1、セリアA、ピザやパスタ、美味しいチーズなどがありますが、それらに対するプラスのイメージが、わたしたちの判断に少なからず影響を与えているのです。
イタリア製のバッグが中国で生産されていても、そんなことはお構いなしとばかりにブランド物のバッグは飛ぶように売れていくのです。冷静になって考えてみると本当に不思議な話ですが、わたしたちは、消費行動をコントロールされることで、善悪の判断すらコントロールされてしまっているのです!
消費コントロールの成果
消費をコントロールされた人間は「操られやすい」のです。
わたしがサラリーマンだったころ、部下の女性に「この仕事頑張って昇進したら、大好きなブランド物のバッグがたくさん購入できるよ」と囁いたことがあります。
当時の女性の部下は、「今までのアドバイスのなかで、一番やる気がでました」といっていました。そして彼女は本当に昇進を勝ち取りました。
この話のカギとなる部分は、「消費をするにはお金が必要」だということです。そしてお金を稼ぐためには頑張って働かなければなりません。
頑張って働いても消費できなければ「諦める」のがまともな人間の発想だと思いますが、かつてのわたしのように消費欲をコントロールされた人間は「借金してでも消費する」道を選ぶのです。
そうやって消費中毒の患者は、今日もまた一人、また一人、生まれていくのです!
消費欲をコントロールされた人間は、消費できない状況には我慢できなくなる一方で、消費すればスッキリする体質になります。そして気づいたときには、消費をするための借金にも抵抗がなくなっているのです。
そうして借金を重ねれば重ねるほど、ますますお金のために働かなくてはいけなくなります。そうして人はいつの間にかお金の奴隷になっていくのです。
事実、デパートのマルイの経営はコロナ禍でも絶好調でした。その理由は「リボ払い」という制度により、多くの人が本来支払うべき以上のお金を「手数料」として毎月支払っていたからです。
マルイに限らずデパートはどこも、一度に返済できないほどのショッピングをクレジットカード払いで実現してもらい、その後リボ払いに誘導します。そうしてデパートは、毎月数千円の定期支払のサービスに加入してもらうのと同等の利益を得ているわけです。
次回予告
消費欲をコントロールされることにより、わたしたちはお金の奴隷になるリスクに晒されています。次回は、わたしたちの消費欲をコントロールしている舞台装置についての理解を深めていただきます。
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