自分のことだけを考えて生きている

さて、宗教が力を持っていた時代であれば、まだ救いもあったでしょう。神の教えこそが真理であり、世界であり、すべてだった。その教えに従ってさえいれば、考えるべき課題も少なかった

しかし宗教は力を失い、いまや神への信仰も形骸化しています。頼れるものがなにもないまま、誰もが不安に打ち震え、猜疑心に凝り固まっている。みんな自分のことだけを考えて生きている。それが現代の社会というものです。

【出典:嫌われる勇気 p.4】

青年は、宗教が力をもっていた時代には「考えるべき課題も少なかった」といいます。そして宗教を頼ることのできない現代人は「自分のことだけを考えて生きている」のだそうです。

そこで今回は「考える」というテーマを深堀していきたいと思います。

考えるヒント

青年は、「現代人は、自分のことだけを考えて生きている」といいますが、あなたは一日何時間「考えて」いるでしょうか?

「考える」の定義を最大限に広げれば、あなたの答えは『24時間』になるでしょう。無意識で何かを考えているということは十分あり得るからです。おそらく青年のいう「自分のことだけを考えて生きている」の「考えて」の部分は、無意識の思考を含んでいると解釈するのが自然でしょう。

しかし「考える」の定義を最大限広げてしまえば、誰だって自分の頭で考えて生きていることになるわけですから、あえて「考える」ための努力をする必要がなくなってしまいます。

「よく考える人」と「たいして考えていない人」の差はどこにあるのでしょうか?

「考える」というテーマで参考になるのが、小林秀雄の『考えるヒント』という本です。わたしは「考えるヒント」という本のタイトルに惹かれて読み始めたのですが、「考えるヒント」はどこにも書いていないのです。

『考えるヒント』はシリーズ1からシリーズ4まであるのですが、わたしの場合、すべて読み終わるころになってはじめて「考えるヒント」のタイトルに込められた想いを感じ取ることができました。

「考えるヒント」というタイトルの本に、「考えるヒント」はほとんど書かれていないのに、読み終わる頃になると「考えるヒント」を実感できるようになる……というのは、なぞなぞのようですが、わたしが経験した真実なのです。

あなたはなぞなぞを解けるでしょうか?もしあなたがヒントなしで、このなぞなぞを解きたいのであれば、『考えるヒント』を読んでから先に進んでください。

考えるヒントの真意

『考えるヒント』は内容そのものも興味深いのですが、内容そのものよりも価値があるのは「考えている人」と出会えることです。もちろん小林秀雄と会話することと、小林秀雄の本を読むことは質の異なる体験ですが、「考えるヒント」を読んでいると、「自分の頭を使って考えるとはこういうことか!」と実感できるのです。

YouTubeがスポーツの世界を変えたといわれています。ボクシングでもサッカーでも、一流のプロの映像を繰り返しチェックすることができるので、学ぶ意欲があればパンチの打ち方からドリブルの方法まで、あらゆることを独りで学ぶことができます。

とはいえ「自分の頭を使って考える」ということ自体を映像で表現するのはムズカシイので、「自分の頭を使って考える」ことは、文字で表現する方がわかりやすいのです。『考えるヒント』は、いわば小林秀雄による「自分の頭を使って考える」ことの実演なのです。

『考えるヒント』を読むと、「自分の頭を使って考える」ということを直観的に理解できます。「自分の頭を使って考える」ための理論や方法を勉強することも、もちろん良いことだと思うのですが、やはりお手本があったほうが、自分自身の「考える」能力を鍛えやすいと思うのです。

誤解されやすいので、最後に念のためお伝えしておきたいのですが、「考える」ことと「学ぶ」ことは異なります。一方で「学ぶ」ことは過去から現在までの知識体系を理解する営みです。他方で「考える」ことは、これまでの知識体系や個人的経験をさまざまに加工し、いろいろなことを発想する営みです。

AIの誕生で学ぶことはますます簡単になりました。しかしいくら学んでも考えるスキルは上達しません。学ぶことだけで差がつく時代は終わりをつげ、考えるスキルの重要性がますます高まる昨今において、『考えるヒント』の重要性は今後ますます高まっていくでしょう。

■ 「嫌われる勇気」に戻る

嫌われる勇気を一緒に読もう!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です