誰もが潜在意識のどこかで銀行がお金を貸していないことに気づいている。あなたが貯金をおろすときに銀行員はいわないでしょう。「あなたはお金をおろすことはできません。なぜなら、そのお金は誰かに貸してしまっていますから。」
マーク・マンスフィールド 経済学者/作家
「預金は税金である」、「預金のほとんどは返済されない」と宣告されたら、どう思いますか?
きっとあなたは「そんな馬鹿なことはありえない!わたしの預金残高は通帳に印字されている。だからわたしのお金はそこにあるのだ!」と反論するでしょう。
しかし現実として預金は(実質的に)税金であり、そのほとんどはわたしたちに返済されないのです。今回の講義では「預金は税金であること」、そして「預金のほとんどは返済されない」という驚くべきカラクリを解説します。
預金は税金である
国家財政には2つの財布があることをご存知でしょうか?
- 一般会計(約100兆円)
- 特別会計(約400兆円)
財務省の公式サイトによれば、国の財政は本来であれば一つの財布(一般会計)で管理すべきとハッキリ記載されています。しかしその一方で、国の行政活動が広範かつ複雑化してくると一本化したままでは会計管理が難しいとも述べています。
そして財務省は、
国家の基本的、一般的な経費を含んだ『一般会計』のほか、特定の収入、特定の支出をもって一般会計とは経理を別にする『特別会計』を設けることとしています。
と説明しています。
要するに、国の歳入(収入)、お財布(一般会計、特別会計)、国の歳出(支出)の関係は、以下の図のようになっているのです。

かつて財務大臣や自民党総務会などを歴任した塩爺こと塩川正十郎氏は、以下のような名言を残しています。
本宿ではおかゆすすって耐えとるというのに離れではすき焼き喰っとる。
本宿とは「一般会計」であり、離れとは「特別会計」のことです。実は特別会計の詳しい使い道は一切公表されておらず、国会議員が情報開示しても各省庁から情報公開を拒否されてしまうのが現状です。
さて……今回の講義で理解してほしいことは「特別会計という詳しい使い道もわからない資金の原資が国債で賄われている」という事実です。国債は誰が購入しているのでしょうか?もちろん答えは「日本国民」です。
- 日本銀行 ⇒ 43.2%
- 銀行等 ⇒ 19.6%
- 生損保等 ⇒ 20.6%
- 公的年金 ⇒ 4.6%
- 年金基金 ⇒ 3.0%
- 海外 ⇒ 6.1%
- 家計 ⇒ 1.3%
- その他 ⇒ 1.2%
銀行が国債を購入したお金は「預金」ですし、生命保険・損害保険会社が国債を購入しているお金だって、加入者が支払ったお金です。年金の原資も国民が稼いだお金です。つまり国債の約6割は国民が負担しているのです。
そして国民が将来のために金融機関に預けたり、払い込んだお金は政府に吸い上げられて、その年のうちに使われてしまうのです。さらに残念なことに、政府に使い込まれたお金のほとんどはわたしたちの元に戻ってきません。
なぜ?国は使い込んだわたしたちのお金を返さなくていいのでしょうか?
返済する必要のない国民の貯蓄
わたしたち国民の貯蓄は、毎年毎年、刻一刻と目減りしています。なぜならば、インフレが続いているからです。
「日本はバブル崩壊以降、デフレで苦しんでいるでしょ?日本はインフレなんかではありません!」と反論する人が多いと思います。しかし「日本はデフレ」の根拠になっている消費者物価指数(CPI)という統計には、ひとつ大きな欠点があるのです。
消費者物価指数(CPI)によれば、確かに日本の物価は横ばいか下がっています。しかしこの数字は、パソコンやデジカメのように同性能のものが毎年半額ぐらいになるものをうまく組み合わせて作った数字なのです。
消費者物価指数を算出する過程で、大幅に値下がりする商品を組み入れているのですから、数字は横ばいか下がるのが当たり前なのです。そもそもインフレやデフレとは、どのような概念だったでしょうか?
すでに解説したとおりインフレやデフレは「物価の上昇・下落」ではなく「お金の購買力(価値)」に関する概念でしたよね?
念のため補足しておくと、インフレとは「お金の購買力(価値)が下がっていること」であり、デフレとは「お金の購買力(価値)が上がっている」ことを意味しています。
要するに、お金の量(マネタリーベースおよびマネーストック)が増加すれば「インフレ」ですし、お金の量が減少すれば「デフレ」です。さて……日本のお金の量は増加しているでしょうか?減少しているでしょうか?
答えは日本のお金の量は「増加している」です。経済成長の伸び以上に、日本のお金の量が増加しているということはイコール「日本はインフレが続いている」ことを意味しているのです。

2012年後半頃から急激にマネタリーベースが増加している様子が、上図から読み取れると思います。なぜマネタリーベースが15年間で5倍にもなっているのでしょうか?
実はすでにその答えをお伝えしています。日本国債をもっとも保有しているのは「日本銀行」でしたよね?
実は数年前までは、日本国債をもっとも保有していたのは「民間銀行」でした。2015年の数字では、日銀が保有する国債の割合は25.5%、民間銀行は33.8%でした。つまりここ2年、3年で、日本銀行は民間銀行が保有する国債を購入し続けているのです。
ここで1つの疑問が湧きませんか?日本銀行は国債を購入するお金をどうやって調達したのでしょうか?
答えは簡単です。「自分で調達した」のです。日本銀行は(事実上、制限なく)日本円を調達できる権力をもっています。日本政府の立場からすれば、日本銀行がやっていることは「喜ばしいこと」です。
なぜならば日本政府の子会社である日本銀行が日本国債を買い取ってくれるだけでなく、国債を購入するためにお金を増やすことがインフレにつながっているからです。さて、ここからが本題です。
インフレになればなるほど政府の借金は目減りしていくことにお気づきでしょうか?
直観的に理解できる説明をしておきます。「世の中に10万円ある状態で1万円返済する」場合と、インフレが進み「50万円ある状態で1万円返済する」のは、どちらが難易度が高いでしょうか?
同じ1万円を返済する場合であっても、世の中にたくさんお金がある環境のほうが、借金の返済が楽であることは明らかです。そうなのです。インフレの状態になればなるほど借金返済は楽になるのです。
実は政府がインフレによって嬉しくなるのも同じ理屈です。たとえば日本政府が発行する国債の条件が、「10年後に日本政府があなたに10万円を支払う」だとします。もしも10年後に、日本にあるお金の量がインフレによって増加していたらどうでしょうか?
10年後に政府が支払う10万円の価値は、現在受け取る10万円よりも価値が薄まっています。つまり債務者である政府が得する一方で、国債の実質的な購入者であり、債権者の国民だけが損をするのです。もうお気づきでしょうか?
インフレが進むほど、日本政府の借金は目減りし続けて、借金の額はやがてゼロに近づきます。たとえば実質7%のインフレが30年続けば、国の借金は10分の1になります。
国の借金が減るのはいいことのように錯覚してしまいますが逆にいえば、国債の実質的な購入者である国民の預金の価値は10分の1になることを意味しているのです。
以上のカラクリに気づくことができれば、日本国民が将来のために準備している預金の価値は毎年少しずつ目減りしていることに気づけるのではないでしょうか?
もしあなたの実感として、「円の価値はそれほど目減りしていない」と感じるのであれば、その理由は単純にお金が使われずに眠っているからです。お金が眠りから覚めた時、円の価値は下落する運命にあります。
まとめ
「日本国民は搾取されている」といわれて想像するのは「税金」だけだと思います。しかし日本国民を搾取する構造は非常に巧妙です。実は「預金」というルートでも、日本国民は堂々と搾取されているのです。
日本政府が「勤倹貯蓄(きんけんちょちく)」を推奨する理由が理解できるのではないでしょうか?これまで説明してきたように、日本人が貯蓄すればするだけ政府に吸い上げられて、(自作自演の)インフレによって預金の価値は目減りしていくのです。
残念ながら多くの国民は思考力を奪われています。ですから、今回説明したカンタンなカラクリであっても、なかなか気づくことができないのです。
そして実は「税金」と「預金」以外にも、「賃金」という面でも日本国民は搾取されているのです。企業の業績がよくても、それに見合う賃金アップは達成されていません。
さらに残酷なことに、賃金アップが達成されないにも関わらず「大量消費」するように誘導されているのです。次回は「消費」という面から、日本国民を搾取する構造について解説します!
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