たとえば、世界的ベストセラーの『人を動かす』や『道は開ける』で知られるデール・カーネギーも、アドラーのことを「一生を費やして人間とその潜在能力を研究した偉大な心理学者」だと紹介していますし、彼の著作にはアドラーの思想が色濃く反映されています。同じく、スティーブン・コヴィーの『7つの習慣』でもアドラーの思想に近い内容が語られています。
【出典:嫌われる勇気 p.22】
アドラー心理学は1920年代から1930年代にかけて非常に注目された心理学であり、さまざまな影響を後世に与えているのですが、そのことはあまり知られていません。そこで今回は、アドラー心理学が後世に与えた影響について紹介します。
芸術療法
アドラーの仲間の一人であるルドルフ・ドライカースの妻、サディー・ティー・ドライカースは、個人心理学を芸術療法の発展のために用いました。
人々が描く絵は、それが個別であれ、集団や共同作業の中であれ、描き方に誕生順位やライフ・スタイルや主要な優先事項を示すことを発見した。
【出典:初めてのアドラー心理学】
ロゴセラピー
ホロコースト生還者で代表作に『夜と霧』があるヴィクトール・フランクルは、自らの心理学を『ロゴセラピー』と呼びました。ヴィクトール・フランクルは、ユダヤ人強制収容所から第二次世界大戦後に生還し、「どんな苦悩の中にあっても生きることには意味がある」と説いた人物です。
ヴィクトール・フランクルは、ウィーン個人心理学会のメンバーでした。ロゴセラピーでは、神経症の原因を突き止めるために過去に向き合うよりも、未来において成すべきことに力点を置いています。このような発想は、アドラー心理学における「目的論」とも共通しています。
またヴィクトール・フランクルは、アドラー派のテクニックである『逆説的指示』を取り入れています。『逆説的指示』というのは、クライエント(アドラー心理学では患者ではなくクライエントと呼ぶ)に「症状を強調する」ように促すテクニックです。
『逆説的指示』の狙いは、クライエント自身に症状をバカバカしいものだと思わせたり、症状が続いた結果を体験してもらうことによって、現状に対する不安を軽減させることにあります。たとえばアドラーは、「一睡もできない!」と主張するクライエントに対して、ベッドに入って起きているようにアドバイスしました。そのクライエントは、まぶたを開け続けることができなかったそうです。
論理・認知・行動療法
アルバート・エリスの『論理療法』(Rational Therapy)や、アーロン・ベックの『認知療法』(Cognitive Therapy)などにも影響を与えているといわれています。いずれも非合理的な信念が、ネガティブな感情を引き起こす原因になっているため、非合理的な思考過程を自覚してもらい、修正していくことを目指しています。
アドラー心理学においても、ライフスタイルが身体や感情に影響を与えるというのはお馴染みの考え方です。アドラーは第一次世界大戦中の陸軍病院勤務時に、寝ている兵士たちを見て、寝相と起きているときの行動の相関に気づいたことをきっかけに、動きと意識は分離できないものであるという確信を深めていきました。
なお認知から行動や感情を変えることを目指すのが『論理療法』『認知療法』である一方で、逆に行動を変えることによって認知を変える『行動療法』という手法もあります。動きと意識は分離できないというアドラーの立場からすれば、『行動療法』のアプローチも不自然ではないでしょう。
神経言語プログラミング
神経言語プログラミング(NLP)は「優秀さの心理学」ともいわれています。優秀な人の思考パターンや行動を分析し、それを体系化することで、誰でもその能力を再現できるようにする心理学的なアプローチのことです。
他人の思考や行動を再現することで、自分の思考や行動を変えるという発想は、アドラー心理学における「あたかもそうであるかのようにふるまう」アプローチと共通点があります。
たとえば「あたかもそうであるかのようにふるまう」アプローチは、「自分では望んでいるものの、できるとは思ってはいないこと」を「あたかもそうであるかのように」演じることをクライエントに提案し、「自分はダメだから」などと弱気を吐くクライエントをまずは「動かす」ために用いられます。
なおアメリカのオバマ元大統領やクリントン元大統領は、NLPを学び、自身の演説に活かしていたそうです。またNLPは他にもビジネス・教育・スポーツなどの領域に加えて、ナンパ術などにも活用されています。
7つの習慣
アドラー思想は『7つの習慣』にも影響を与えています。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
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